乗り心地指標「IRI」で路面性状調査に新たな形
地崎道路(本社・東京)と東農大は、地方自治体の道路維持管理業務に関する新しい支援システムを開発した。舗装路面と運転者の乗り心地を関連付けたIRI(国際ラフネス指数)測定に基づき路面性状を調査し、集めたデータを独自の舗装管理システムに取り込むことで、劣化予測や修繕の積算などに役立てる。予防保全につながる新しい管理方法として道内自治体を中心に広く使ってもらいたい考えだ。
支援システムは、IRI測定装置の「ACTUS」と舗装管理システムの「PSS」で構成。ACTUSで道路のIRIを測り、計測データをPSSで自治体の道路台帳CADやGIS図面と連携させることで、道路の劣化状況や補修記録を視覚的に把握することができる。
ACTUSは北見工大ベンチャー企業のPROFICT LAB(本社・東京)などが開発。PSSは東農大の山崎元也教授が作った。地崎道路と東農大、北見工大は昨年11月、自治体の道路維持管理業務を支援するシステムの共同研究で基本合意書を締結。今回の支援システム開発は、こうした共同研究の一環で進められた。
従来、路面性状を表す指数はMCI(舗装の維持管理指数)が使われている。しかし、算出にはひび割れ率とわだち掘れ量、平たん性のデータが必要で、調査費用がかさむ難点があった。さらに国土交通省の舗装点検要領では、5年に1回程度以上の点検頻度を目安にしていて、実態を反映させることに課題があった。
IRIは、乗り心地というドライバーの感じ方を基に導き出される指標。世界銀行によって1986年に提唱された路面評価で、国際的には一般化している。日本では高速道路各社が管理道路の縦断凹凸評価でIRIを用いている。
地崎道路と東農大は昨冬、千歳市の協力の下、市道7路線でACTUSを作った路面計測を実証試験した。車両左前の車軸部分とエンジンルーム内に加速度計を取り付け、GPSアンテナで位置情報を取りながら路面変位と時間、速度、距離からIRIを算出。千歳市が持つMCIのデータと相関性があり、路面性状調査として有効なことを確認した。
IRIデータは10m間隔で取得。集めたデータをPSSに取り込むことでIRI値を時系列で棒グラフに表したり、補修優先箇所を特定するなど予算計画を立てられることも分かった。より広域的な維持管理に貢献しようと、道路台帳のCADデータをGIS表示できるよう研究している。
加速度計2個の変位差を基にした推計で道路のポットホールやひび割れを判断するため、レーザーを使った路面性状調査のように雨や雪の影響を受けない。
同社では路面状況や気象条件に左右されないオールシーズン型の調査手法として自治体に広く採用してもらいたいと考えている。
実証試験に携わった地崎道路北海道支店工務課の山田雄一係長は「冬季でも測定できることが強み。千歳市内の調査でも2、3月の凍上影響をIRIによって数値化することができた」と説明する。
東農大の山崎教授は「システムは低価格で高頻度に調査できるのが特長。日々変わる舗装路面をモニタリングすることで、より効果的な予算計画や補修計画の策定に役立ててほしい」と話している。
(北海道建設新聞2020年6月29日付3面より)