投資家の開発意欲高く
近年、大型開発が相次ぐ道内随一のリゾート地・ニセコ。その中心地であるひらふ地区を拠点とし、倶知安町内で投資動向に関する情報収集や観光振興活動のサポートに取り組んでいるのが北海道銀行NISEKO出張所だ。出張所の役割や新型コロナウイルス感染拡大がもたらす開発投資への影響について葛西英剛所長に聞いた。
―設立の経緯は。
2016年12月にNISEKO事務所を立ち上げ、ニセコの情報収集などに当たってきた。19年4月に出張所へ改称し、2人体制で業務を進めている。
―事業概要と役割は。
ニセコエリアへの出店、ホテルやコンドミニアムの建設を計画している国内外の事業者に対し、地域の投資状況などさまざまな情報を提供するほか、融資の相談に応じている。海外事業者からの要望で、建設業者など日本のビジネスパートナーを紹介する場合もある。
融資は主にホテル建設や、事業者自身が負担する水道・電気といった生活インフラの整備が対象。地価の異常な高騰を招かないよう、基本的に土地取得の融資はしない。地域の価値向上や観光振興に寄与することがわれわれの任務だ。
―近年はひらふ以外の周辺地域でも開発が進んでいる。
ひらふと比べると未開発の土地が多く、地価も割安感がある。特に花園地域は1月にパークハイアットニセコHANAZONOが開業し、コンドミニアム利用者にとって市街地のスーパーに出やすいなど利便性が高く、今後注目される。
―倶知安町では事業者に対する開発負担金を求める声が上がっている。
事業者側からしてみれば、今でもある程度の受益者負担金を支払っているため、これ以上の負担への懸念はあるだろう。
ただ、相次ぐ開発による水道需要の急増で水道の供給体制は数年後にはもたなくなり、財源確保は避けられない。事業者負担が過大になると、開発投資にマイナスの影響が出てくるだろうが、自己負担が増えてでも開発を進めたい外国人投資家は少なくない。負担をうまく調整する必要がある。
―コロナ禍がニセコにもたらす影響は。
インバウンド回復の見込みが立たない中、短期的には投資が落ち込む可能性はある。ただ、中長期に見ればリーマンショックや東日本大震災後のように数年かけて復活するのではないか。
また、ニセコは長期滞在型で人が密集するような施設が少ないため、ウィズコロナの時代にはプラスではとの声も聞く。首都圏の企業がニセコでのテレワークを決断したという話もあるし、そうした意味でニセコには利点がある。
―投資家の姿勢に変化は。
香港やシンガポールといったアジア系、オーストラリアや米国など欧米系の投資家から、開発に関する相談は依然多く寄せられている。
渡航制限で経済活動が抑制されている現状を、不動産取得に向けた好機と捉える国外の投資家は少なくない。5月後半から電子メールでの問い合わせは増えていて、来日できるようになったときへの準備を進めているようだ。彼らは2年後以降を見据えて動きだしている。
(聞き手・塚本 遼平)
葛西英剛(かさい・えいごう)1970年旧大野町(現・北斗市)生まれ。法政大社会学部を卒業後、93年に北海道銀行入行。地方支店や本店営業部を経て、2016年12月にNISEKO事務所長となり、19年4月から現職。
(北海道建設新聞2020年7月1日付2面より)