
正司毅社長
本道と海外の架け橋に
地元に密着し、地域産品と国外市場を結ぶ地域商社。その先駆けとして、2015年の設立以来全国から注目されてきたのが北海道総合商事(本社・札幌)だ。3月下旬に北海道銀行から出向して社長に就いた正司毅氏(58)は、同行の瀋陽駐在員事務所長を通算9年務めた中国通。ロシア貿易を強みとしてきた総合商事に、新たな広がりをもたらそうとしている。
―瀋陽から戻ってすぐ商事の社長に就いた。
帰国したのは2月1日。新型コロナウイルス問題で、外務省が中国の感染症危険レベルを渡航中止勧告の段階に引き上げたため、緊急帰国の形になった。1カ月ほどして当社の顧問になり、3月24日に社長に就いた。
―地域商社に求められる役割とは。
地域経済を支える存在として行政、金融、そして商社がある。行政は政策で旗振り役になれるが、公共性が強く求められるため個別企業をサポートできない。金融は企業を支援できるが、銀行法などの制約もあって、事業に直接関わるのは限界がある。両者が届かないところを埋めるのが商社だ。もうかるビジネスを地元企業と一緒につくって、事業を走らせることができる。
―総合商事は対ロ貿易で知られてきたが、正司社長は中国の専門家。路線変更するのか。
「ロシアに強い商社」という今までの路線を変えることはない。私は03年に道銀が国際部に中国ロシアデスクを立ち上げた時の初代室長で、両国を見ていた。商社としては今後、中国と東南アジアをターゲットに加える方針だ。
―コロナ禍で外国に行けない今、商社は仕事が難しいのでは。
SNSアプリによるリモート会議が想像以上に機能していて、ロシアや中国との間で連日打ち合わせをし、商談も前に進んでいる。インターネット環境とスマートフォンがあれば、距離にかかわらず目の前にいるように話せることを実感する日々だ。
コロナで飛行機が飛んでないのは事実だが、船便による貿易は変わらず続いている。建設業との関連で言えば、ロシアから住宅建築の資材が今月ちょうど入ってくるところだ。
―サンプル品ならまだしも、画面越しに話しただけの相手と本格的な取引に至るのか。
確かにビジネスは取引条件だけでなく、相手先との人間的な信頼関係も重要で、完全にリモートのみで新規の大型取引というのは難しい。当社の場合は現地に人脈も拠点もあり、実績を通した信頼感をベースに商談ができる。そうした意味では、当社が強みを発揮しやすい状況になっている。
―コロナ禍でマスクの国内生産が少なかったことなどから、貿易を前提とする社会への慎重論も出ている。
日本の貿易総額は1999年は82兆円だったが、それから20年たった昨年は155兆円まで増えている。外国との関わりなしに経済を成長させるのは非現実的で、生産の国内回帰が出てくるとしても一部にとどまるだろう。大局的に見れば貿易は今後も伸びる。海外との架け橋として、北海道の役に立ちたい。
(聞き手・吉村 慎司)
正司毅(しょうじ・たけし)1962年札幌生まれ。85年北海道銀行入行。国際金融情報センター出向、国際部勤務などを経て2006―12年中国瀋陽駐在員事務所長。14年から3年間芽室支店長を務め、17年に再び所長として瀋陽勤務。20年3月から現職。
(北海道建設新聞2020年7月6日付2面より)