距離感近く、結び付き強固に
新型コロナウイルス感染症の終息が見通せず、前回同様、日ロ間で人の往来が再開するめどが立たない中での本レポートとなる。
サハリン州のコロナ感染者は3月下旬に最初に報告され、それ以降7月3日現在で延べ876人に上る。最近は数十人単位で報告される日が続き、本稿が掲載されるころにはさらなる増加が予測される。
州内は5月末まで厳しい外出規制下にあった。今ではレストランやカフェの店内飲食も再開し、商業施設も元に戻りつつあるが、営業時間や座席制限の影響もあり、外食産業全般の景気は落ち込んでいる。感染増からは、再び規制が強化される可能性も否定できない。
だが州民の購買意欲そのものは悪くない。通常、経済が低迷すると買い控えが起こるが、ロシアでの様相はやや異なる。1998年の金融危機で自国通貨ルーブルの暴落を経験したため、人々はルーブルでの貯蓄にリスクを感じている。通貨下落に備え、現金を自動車や不動産などに代えることで、自らの資産価値を保全しようとする傾向がある。そのため、価値が上がりそうなものの購買意欲はむしろ高いと言える。
この状況下、稚内市は5月28日に稚内―旭川―ユジノサハリンスクを結び、経済交流に関する初めてのオンライン会議を主催した。サハリン側からは飲食業、ピラミダ社のアレクセイ・キム社長が参加。同社にはラーメン店があり、本市が支援する稚内―コルサコフ直行の貨物船で運んだ旭川製生麺を使っている。キム社長はラーメン店から会議につなぎ、本市のサハリン事務所からもロシア人職員が参加した。日本側は私のほか、通訳を含む2市の職員、貿易に関わる民間業者が参加した。
オンライン会議は電話やメールと違い、離れている複数人が対面で会話できるメリットがある。これをサハリンとのビジネスに活用できないかと考えて実践したのが今回の試みだ。結果は成功で、お互いの距離感は想像以上に近く、約1時間半、通訳を挟んだ会話も十分スムーズに運んだ。
今後、サンプル品提示や商品説明、デモンストレーションなども、オンラインで可能との感触がある。場所を選ばないオンラインの特性は、サハリンなど遠隔地との商談で特に発揮される。出張費用が不要なのも中小企業が関わりやすい点だ。
今回の会議は、稚内からサハリンに日本食材を運ぶルートの構築について、実現可能性をヒアリングする目的もあった。対話するのは、目の前の取引や短期的利益のためだけではない。これまでサハリンとの事業で好結果を得ている人や企業は、交流を通して互いの信頼を深め、長期的な関係を志向する点で共通している。相手と共有する夢や構想、事業が多いと、コロナ禍のような状況に置かれても関係がすぐに切れることはない。
北海道とサハリンの交流をコーディネートし、信頼関係を強くする意味で、本市や現地事務所の存在意義はますます大きくなっていると感じる。オンラインも活用しながら、今の逆境をむしろ好機と捉え、両地域の交流がさらに進展することを望みたい。
(北海道建設新聞2020年7月6日付3面より)