適切鑑定評価で経済発展を
6月1日に日本不動産研究所の証券化部副部長から北海道支社長に就任した石川勝利氏。北海道新幹線札幌延伸による交通インフラの向上を背景に、札幌市内を中心に道内は再開発案件が数多く進捗(しんちょく)している。新型コロナウイルスの影響でホテルをはじめとする不動産投資の先行きが不安視される中、適切な鑑定評価を実践し、道内の経済発展に努める。
コロナ禍でも86%が「積極的な新規投資」意欲
―コロナ禍での不動産投資の影響は。
日本不動産研究所の「不動産投資家調査」(2020年4月現在)の調査によると、新型コロナウイルス感染症の拡大が不動産投資市場に及ぼす影響について、投資家への特別アンケートをしている。この中で、コロナ禍の投資家のマインドはネガティブな意見が増えているが、依然として86%の投資家は「新規投資を積極的に行う」というスタンスを取っている。アセット別に見ると、その中でも一番厳しい見方をするのがホテルだ。回復には時間がかかるだろう。
一方、共同住宅や物流施設、ヘルスケア・老人介護施設は、底地などではネガティブな影響がほとんどない状況で、期待利回りにも変化が見られないが、新型コロナウイルス収束までの時間が長くなれば、こうしたアセットについて徐々に影響が出てくることが懸念される。
―テレワークの導入が広まっている。オフィス需要の影響は。
在宅だけでなく、働き方を別の形でやっていくという動きは出ている。コロナ禍で在宅勤務が増えるとなれば、オフィス床が縮小することになるだろう。半面、3密を回避するためサードプレイスオフィスを設けたり、フロアを拡張したりするなど、床面積を大きくすることも考えられる。今後どう市況が動くのか注視したい。
―アフターコロナの市況をどのように予測する。
都道府県境をまたぐ移動の自粛要請が全面解除され、収束に向けた工程が組まれている。これまで市場は停止状態にあったが、不動産のライフサイクルを考えた価値に対するインパクトは大きなものではないと考えている。不動産の価値は長い期間で考えるべきものだと思う。
また、今回のコロナ禍の不動産市場は、08年に発生したリーマンショックのような金融崩壊の状況とは違い、今のところ一部のアセットを除き不動産投資の利回りに大きな変動はない状況だ。
今後の不動産価格は新型コロナウイルス終息までの期間が長引けば長引くほど下振れリスクが拡大する。これまで中国をはじめとする海外投資家により不動産価格が高くなり過ぎていた面もあった。適正価格に戻れば買いたいという事業者も増え、むしろ市場は促進することも考えられるのではないか。
―道内発展の方策を。
街の発展が著しい福岡市天神と同様、札幌市にも注目していた。30年の新幹線札幌延伸に合わせて札幌駅前周辺では再開発計画が多数ある。ホテルやオフィス、マンションが複合的な開発になると思うため、これまでの経験と知識を生かし、何らかの形で札幌市をはじめとした北海道の経済発展に寄与したい。
(経済産業部 武山勝宣)
石川勝利(いしかわ・かつとし)1965年5月6日、埼玉県久喜市生まれ。明治大政治経済学部を卒業後、89年に日本不動産研究所に入社。
(北海道建設新聞2020年7月8日付2面より)