軽量化、特殊形状で土砂除去負担軽く 災復用シャベル

2020年07月17日 15時00分

道総研、室工大、浅香工業が試作開発 実用化目指す

 道立総合研究機構と室工大、シャベルやスコップなどの製造販売を手掛ける浅香工業(本社・堺)は、災害復興作業用のシャベルを試作開発した。軽量化と柄の部分の特殊形状で、土砂を除去する作業負担を軽減できるのが特長。将来的な実用化を目指す。

軽量化を追求したほか、柄の形状を工夫した

 近年は豪雨災害が多発し、洪水や土砂崩れなどが懸念される。復興作業はある程度の土砂を人力で除去することが必要なため、現場の負担を減らし、一刻も早く日常を取り戻せる手助けになるようシャベルの開発に取り組んだ。

 過去に開発した雪かき作業の負担を軽減できる「UDスコップ」から着想を得た。人間の体は上半身で30―40㌔あり、前かがみになるだけで腰へのかなりの負担が生じる。

 UDスコップは柄の部分がS字にカーブしているのが特長で、握る位置が高くなる。一般的な除雪スコップと比べて雪をすくい上げるときの深い前かがみ姿勢を浅くし、腰周りの負担を2割程度軽減可能だ。

 試作品では軽量化を追求し、さじ部にパンチング加工を施すなどさまざまな工夫をしている。プロジェクトの中心を担う室工大地方創生研究開発センターの吉成哲センター長は、さじ部に関し「水の抜け方や使い勝手などを総合的に考慮している」とする。

 除雪作業だと雪をすくい投げ捨てる動作が多いが、土砂の場合は運搬用の一輪車に移したりするのが一般的。柄がS形状だと持ち上げるときにさじ部の位置が低くなるため、腕の力で引き上げる必要がある。このため、土砂除去用シャベルの柄はS形状よりも曲げが緩やかなZ形状とした。

 道総研が一般的なシャベルと試作品を比較するため30―40代の男性6人を被験者に、土砂を想定した5㌔の砂袋をさじ部に乗せ、すくい上げを繰り返す動作で呼吸代謝計測試験をした。結果、試作品を使うと一般的なシャベルに比べ約13%消費エネルギーが減ることを確認したという。

 道総研産業技術環境研究本部企画課企画グループの前田大輔主査は「1割から2割減るだけでも、長時間作業したときの疲労感はだいぶ変わる」と話す。

 将来的な実用化を目指す。吉成センター長は「試作段階だが、量産化の上では長さや柄の角度など検討が必要」と明かす。前田主査は「少しでも早く日常を取り戻すために現場で利用できる状況になれば。引き続き実用化に向けた開発を支援したい」としている。

(北海道建設新聞2020年7月16日付3面より)


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