北海道独自の支援策を
新型コロナウイルスの感染拡大は経済に大きな打撃を与えた。特に手元資金に余裕がない中小企業にとって長期間にわたる経済停滞は深刻な状況をもたらしている。道内中小企業経営者らで構成する北海道中小企業家同友会の守和彦代表理事(77)に現状を聞いた。
―コロナによる中小企業への影響は。
深刻な状況だ。先行して発令した道の緊急事態宣言で、経済が突然止まった。特に学校の休校が効いた。企業の経営だけでなく、働く親や子どもにとって〝家庭の生活〟が壊されたともいえる。
建設業は現段階で大きな影響はないようだが、今後の先行き、来年度の工事関連予算などを不安視する声は多い。食品など一部は業績が上がったところもあるようだが、業種問わず全体的に落ち込んでいる。
―国や自治体などは企業支援策を展開している。
同友会では資金支援の迅速化、申請書類の簡素化、申請手続き支援の強化の3つを強く求めてきた。
道内の企業割合は99.8%が中小企業。その多くは手元資金の余裕が月間売り上げの2カ月分にも満たないといわれている。国などは補正予算で中小企業支援枠を増やしているが、全額・早急に企業へと流してほしい。
書類は従業員が数人規模の場合、整備が追い付いていない企業が多いのが実情。しかし、申請に膨大な書類が必要となれば、作成の手間や時間を考えて申請自体を諦めてしまう。
―新たに求めたい支援は。
コロナはこれまでに経験のない新型不況だ。今までの不況対策では通用しない。新たな不況対策が必要だ。道は「新北海道スタイル」を打ち出したが、独自の企業支援策である「新北海道支援」のようなものを作るべきだ。
中小企業は地域にとってのインフラともいえるが、コロナは中小企業、地域を疲弊させた。資金がいつまで持つかを不安に思う経営者が多い。中小企業は明日の希望があれば耐えられるものだが、今はそれが見えずに苦しんでいる。早急に資金を回し、気力を維持させてほしい。
―リモートワークの導入など、コロナで企業経営・事業に変化が現れた。
中小企業でもこれまでリモートワークに関心があった企業は導入していた。従業員規模が30人以上のところがほとんどで、それ以下は必要に迫られていなかったが、コロナの影響でいや応なく導入や対策が求められている。
コロナは歴史を早めたといわれている。リモートワークや事業承継も含め、10年先に考えていたことを今やらなければならない企業が出てきている。
―会員数と活動の特徴は。
会員数は5921人、企業数では5764社。
規模を見ると約8割が従業員50人未満で、うち4分の3は20人未満だ。業種別には半数弱がサービス業で、卸・小売が20%、建設業は17%ある。会員同士の交流の場を提供している。経営の悩みや課題を共有し、解決策を学び合うことができる。
―今後の見通し、中小企業へのメッセージを。
ソーシャルディスタンスなどの対策がいつまで続くかによって不透明ではあるが、すぐには回復しないだろう。
中小企業経営者には、とにかく終息までは生き延びることだけを考えてほしいと呼び掛けている。資金を集めるだけ集め、出ていく金を抑えることを粘り強く続ける。経営者としてのしぶとさを思い出し、希望を見失わないでほしい。
(聞き手・小山内 未央)
守和彦(もり・かずひこ)1943年伊達市生まれ。伊達高卒業後、靴製造・卸販売の伊達履物(現・ダテハキ)に入社。87年に代表取締役に就任し、2009年から取締役会長。同友会では03年から代表理事を務める。
(北海道建設新聞2020年7月21日付2面より)