新たな補助制度の必要性 国、自治体、事業者が納得できる負担配分を
大型リゾート開発が進むニセコの倶知安町山田地区で、上水道整備の在り方が問われている。町は水道需要増に伴う施設増強に向け、2021年度からの8カ年で必要な事業費を68億7000万円と試算するが、巨額の費用負担に町議会は批判を強めている。一方、導入に向け検討の始まった開発負担金には開発事業者側からの不満が漏れる。国庫補助が心もとない中で、町は難しいかじ取りを強いられそうだ。 (小樽支社・塚本 遼平記者)
山田地区では近年、相次ぐホテルやコンドミニアム建設で水道需要が急増。19年1月1日には最大配水量が2924m³と、供給能力のほぼ100%に達した。施設強化により同年末までに最大稼働率は83%へ低下したものの、町は28年度に1日当たりの最大配水量が6000m³になると見込み、さらなる増強を図る方針だ。
巨額の費用負担に町議の批判
13日の町議会経済建設常任委員会で水道課は、比羅夫浄水場と中区配水池の新設、低区配水池の廃止、高区配水池の改修、送水管などの増径で28年度までに1日6167m³の水量を確保する計画を提示。28年度までの事業費を68億7000万円と試算し、従来案から約2億円減額できるとした。
しかし、町議からは否定的な意見が相次いだ。水道課は事業費のうち、国からの補助金を除いた56億1500万円を水道企業債の発行で賄うことを想定。そのため将来世代の負担に対する懸念や、開発事業者から徴収する開発負担金について早急に方向性を示すべきとの声が上がった。
開発負担金の導入を検討する上で、町が先行事例として参照するのが千葉県企業局だ。1960年代の急速な都市化で水道需要が増えたため、76年に制度を開始。建築物には1日最大給水量1m³当たり14万3000円を乗じた金額、宅地には造成面積に1m²当たり715円を乗じた金額を課している。町も給水量や造成面積に応じた負担金を開発事業者に求め、上水道施設の整備費に充て水道事業の健全化を図りたい考えだ。
負担金に開発事業者も不満
ただ、導入へのハードルは決して低くない。ホテルやコンドミニアムの建設・運営を手掛ける町内の事業者からは「既に水道利用加入金という形で大きな受益者負担を払っている」との不満が聞こえる。
町が定める水道利用加入金は、準都市計画区域に指定される山田地区の場合、主要ホテルの平均口径50㍉で667万円。都市計画・用途区域内の12倍に設定していて、千葉県の給水申し込み納付金と比べても倍以上だ。事業者が持つ不公平感を解消するような負担調整が必要となる。
さらなる受益者負担を検討する背景には、国の補助制度が不十分なこともある。現時点で水道課が想定している補助は厚生労働省の「生活基盤施設耐震化等交付金」で、主に水道施設の耐震化や老朽化対策を支援する。同課の担当者は「リゾート開発の進行に伴う施設増強を対象とした国庫補助はない」と話し、観光庁に制度創設などを要望する考えだ。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で需要が落ち込んでいるとはいえ、観光は国の成長戦略の中核を成す。その振興に必要な経費の負担について国、地元自治体、事業者のそれぞれが最大限納得できる制度設計が求められている。
(北海道建設新聞2020年7月22日付1面より)