「解体は拙速」 北海道百年記念塔の内部視察報告会

2020年07月29日 10時00分

塔体は健全 未来を考える会が報告

現地施設から確認された記念塔の状態や見解を報告した

 建築家有志で構成する北海道百年記念塔の未来を考える会は25日、解体が計画されている記念塔の内部視察報告会を札幌市内で開いた。報告者は、塔体は健全で、外板のさびも「劣化ではなく熟成の証明」であるという見解を示し、道の出した解体判断は拙速だとあらためて強調した。また、地域のシンボルとして愛されている記念塔の存続を、今後も技術的な知見から訴えていくことにした。

 報告会は、地元有志の北海道100年記念塔を守る会との共催。6月21日に設計者、構造家、歴史家らと共に実施した現地視察からの考察を共有した。

解体する方針が決まっている百年記念塔

 山之内建築研究所(札幌)の山之内裕一代表は、外板として使用されているコルテン鋼板について、安定したさびの状態で100年以上持つ優れた材料であることを取り上げ、さびは劣化ではないと説いた。道が13mの高さから落下したとする部材についても鉄製ではなく、後付けされたステンレス材の水切り板であり、適切な保守点検で落下防止できた可能性に言及。解体はせずに、モニュメントとして継承することを提言した。

 北海道職業能力開発大学校の駒木定正特別顧問は、記念塔は50年を経て多くの道民に親しまれ、設計競技の最優秀作として当時最先端の技術を導入したことから、建築的、文化的な価値に注目。「建立の趣旨も踏まえて、北海道の技術者の英知とノウハウを結集して保存することが求められている」と述べた。

 北海道建築技術協会長を務める石山祐二北大名誉教授も、老朽化は限定的で構造部材は健全であるという認識を示し、道が経済的観点のみで解体を前提に進めていると指摘。寄付を募って建設した経緯も踏まえ、「一度造ったものは安易に取り壊すべきではない。寿命を全うさせることが後世の人間がすべきこと」と訴えた。

 報告内容や参加者から道の説明不足を疑問視する声に、考える会の藤島喬代表は建築家として「おかしいと思うことは主張し、正しく理解してもらう」と述べ、今後も意見を発信し続けていく考えを示した。

(北海道建設新聞2020年7月28日付1面より)


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