共同通信デジタルと市が連携 地場企業含めた展開も
国内最先端の省エネ型データセンターを目指して―。排雪を利用しコンピューターサーバーを冷却するホワイトデーターセンター(WDC)構想が今秋に美唄市内で事業化する。事業主体の共同通信デジタル(本社・東京)は、データセンター開設だけでなく、排熱利用の陸上水産養殖や植物工場設置、バイオマス発電やソーラー発電も構想。美唄モデルとして自治体と緊密な連携を構築しつつ、地場企業も含めた共同体で事業展開したい考えだ。
事業化に向けては、27日に同社と市が工業団地の空知団地Bゾーン一部区画の譲渡契約を締結。市が所有する茶志内3623の10の用地3・6㌶や既存の実証実験棟などを2294万5000円で取得した。
まずは既存の実証実験棟(S造、平屋、延べ110平方㍍)を活用し、東京のIT企業から受注を受けたサーバーを置く予定。建物内部設備の整備やサーバー移設を経て、11月にセンター開設を見込んでいる。
今後については、年度内にも複数社でスキームを作り全体構想の内容を固める意向。そのため、空知団地Bゾーンの残る6・1㌶や隣接するCゾーン8・7㌶の取得も視野に入れている。
WDC構想は、美唄自然エネルギー研究会が2008年度、同団地Bゾーンに3000ラック規模のデータセンターを想定して提唱。構想実現に向けて、13年度に市と共同通信デジタルが包括連携協定を結んでいる。
14年度には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の再生可能エネルギー熱利用技術開発事業で、雪屋媚山商店、共同通信デジタル、NHNテコラス、環境技術センター、ズコーシャ、室工大、美唄市の7者が共同となり「都市除排雪を利用した雪山貯蔵による高効率熱供給システムの研究開発」テーマに事業採択を受けた。
NEDO事業は18年度まで空知団地Bゾーンに建設した実証実験棟や雪山で実験に取り組んだ。データセンター内に20ラックのサーバーを配置し、15年9月から雪冷房の実験を開始したほか、アワビの陸上養殖工場と植物工場の実験施設としてビニールハウスを1棟設置。サーバーの排熱で生育に適切な温度を保つことができるかを確かめてきた。
19年2月の実証実験終了後は同年7月に旧NEDO施設・備品などの無償貸与契約を市と締結。顧客のめどが立ったことで事業化に踏み出す。
27日の空知団地の調印式で、板東知文市長は「良きパートナーとして、相互の関係を一層充実させたい」と期待。同社の伊地知晋一専務は「地域活性化につながるよう周辺関連を含めて事業規模を拡大し、美唄モデルを世界に発信していきたい」と意欲を見せた。
(北海道建設新聞2020年7月29日付14面より)