太平洋設備常務の坂本禎一氏に聞く/道央圏進出、新たな挑戦

2020年08月06日 10時00分

さつでんを子会社化 社長に就任  

 太平洋設備(本社・釧路市、小茄子川充社長)が、札幌の電気工事業、さつでんを子会社した。4月に全株式を取得し、7月31日付で太平洋設備の坂本禎一常務(50)がさつでん代表取締役社長に就任。2年前に買収した千歳の高橋管機工業を含めて道央でのグループ営業体制構築に乗り出す。2件のM&A交渉の当事者でもあった坂本社長に太平洋設備グループの方向性を聞いた。

坂本 禎一氏

 ―さつでんとの接点はいつから。

 太平洋設備が道央、中でも札幌圏の市場開拓を本格化しようと検討する中で、昨秋に北陸銀行から紹介されたのが発端だ。さつでんの早川幸広社長はそのとき69歳で、70歳の節目で勇退したい意向で譲渡先を探していた。協議を重ねて半年ほどで合意し、ことし4月にM&A契約を結んだ。早川社長が70歳を迎えた7月に、私が代表を引き継いだ。

 ―さつでんは電話や内線、LANなど通信系がメイン。空調などを主力とする太平洋設備にとってのメリットは。

 さつでんは社員11人の小さな企業ながら約半数を占める技術者が専門性の高い仕事をし、安定的な業績を上げてきた。太平洋設備にも電気系の職人が複数いて、技術交流で互いの能力を高められる。また、データセンターを例に挙げると分かりやすいが、IT系の施設では空調管理の需要もあって、セットで提案する営業も可能になる。

 ―さつでんの社員は急なトップ交代に動揺していないか。

 状況を受け入れてもらっている様子だ。早川前社長が後継難を苦慮していたことは周知で、私も春のうちに全員の前であいさつし、今後の方針を話している。一般的にM&Aは社員への説明が最後になることが多い。私たちも高橋管機工業のM&Aでそうだったが、一部の反発を招き、離職者を出してしまった。今回はこれを教訓にした。

 ―買われる側にとっては何が変わるのか。

 太平洋設備が蓄積してきた多くの経営ノウハウを取り入れられる。さつでんに限らず、少人数の建設業は、仕事のIT化にしても働き方改革にしても進んでいないのが実情だ。そのせいで人材が集まらず、来ても長続きしない。グループ会社なら経営改善を一緒にやれて、その結果として業績が伸び、いい人が入るようになればグループとしてもメリットだ。  

 ―太平洋設備の年商は単体で36億円。M&A路線を進め、グループ総額でどんな規模を目指すか。

 10年以内に50億円という目標はあるものの、私の考え方として売り上げ規模は最重要ではない。よそを見れば、規模を求めて無理にM&Aに走って失敗している例もある。買収候補先の話はよくいただくが、重要なのは売り上げより利益と技術で、そこをよく見極めながら進めたい。  

―釧路で太平洋設備は指折りの優良企業。なぜ道央圏に進出するのか。  

 マーケットの話をすれば、人口が減る道東の将来性を考えたとき、道央に目を向けざるを得ないという事情もある。だが本音を言えば、純粋に仕事で挑戦したいという思いが大きい。地元で築いた地位に安住せず、新しい挑戦をしてこそ若い社員の刺激になり、外部からも人材が集まるグループになると信じている。

(聞き手・吉村 慎司)

 さかもと・よしかず 1969年10月釧路市生まれ。88年釧路江南高卒、太平洋設備入社。経理畑でキャリアを積み、2009年取締役、16年常務。20年7月からさつでん社長と兼任。1級建設業経理事務士。

(北海道建設新聞2020年8月5日付2面より)


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