本道の優れた住宅技術に活路を 道建設部建築企画監 長浜 光弘氏

2020年08月10日 09時00分

 新型コロナで新たな需要喚起

 道建設部建築企画監に就任してから4カ月が経過した。人口減少に伴う空き家の増加や、建築物の耐震化促進など課題を抱える中、新型コロナウイルス感染症の流行により、一層厳しさを増す住宅産業。逆境をチャンスに変えるため、本道の優れた住宅技術に活路を見いだす。(建設・行政部 仲道 梨花記者)

長浜 光弘氏

―本年度の大型事業の予定は。

 引き続き札幌医大再編整備や赤れんが庁舎改修を実施する。札幌医大は現在、付属病院既存棟改修3期の実施設計を進めている。事業費は約40億円を見込み、WTO政府調達協定対象工事となる予定だ。新型コロナウイルスの感染が拡大する状況下で、医療施設を整備することは非常に大きな課題であり、しっかり取り組む必要がある。赤れんが庁舎改修は、東京五輪のマラソン・競歩の開催決定により着工が1年延長した。重要文化財のため、専門家の意見や文化庁との協議を踏まえて慎重に整備する。観光の中心的役割を担う施設。多くの人に活用してもらえるよう整備を進めていきたい。

 ―本年度、道営住宅整備活用方針を見直した。

 今回見直した方針では、新たに市町村からの提案に応じて道営住宅を整備できるような考えを盛り込んだ。市町村の取り組みに道営住宅を組み入れることで、どのように地域の力になるかを評価する。道営住宅はセーフティーネットとしての役割だけでなく高齢者や子育て世帯の支援など、市町村の施策を支援する側面もある。今後も市町村と連携して整備を進める。

 ―空き家の増加や建築物の耐震化などが課題になっている。

 空き家対策については、特別措置法が制定されて5年がたち、国は見直しを進めている。道でも取り組んでいく中で、課題が浮き彫りになった。空き家が増えている一方で、大規模な空き家に対する手だてが十分ではない。大規模ビルが空き家になっている場合、行政代執行に莫大(ばくだい)な費用がかかり、自治体の負担が大きい。市町村からは解体費の自治体負担を減らしてほしいなどの要望がある。現在見直している法律の枠組みに、そうした思いを盛り込むよう国へ要請活動を続ける。

 建築物の耐震化は近年、地震が多発しているほか、日本海溝や千島海溝沿い巨大地震の想定が発表されたことを踏まえ、喫緊の課題と捉えている。耐震化は進んできているが、まだ100%ではない。耐震化の重要さを理解してもらえるようセミナーの開催や、所有者に直接お願いするなど地道に進め、全ての建築物が耐震化するまで手を緩めずにやっていきたい。

 ―新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みは。

 建築工事は、閉鎖された空間での作業が多く、特有の難しさがある。施設利用者がいる中で工事を行う場合もあり、細心の注意を払い、やれることは全て取り入れている。現場との打ち合わせもリモートで実施するなど、工夫しながら感染防止に取り組んでいる。新型コロナウイルス感染症対策は何が正解か分からない。常に意識しながら、できることをやっていく。

 また、新たに創設した北方型住宅2020は、コロナ禍でもピンチをチャンスに変える施策だと思っている。新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が当たり前になった。必ずしも東京に住む必要がなくなったことから、新しい住宅需要が出てくると予想する。これまでは道内に仕事がなければ移住しづらかったが、その心配がなくなった。本道の環境と気候に適した質の高い北方型住宅には優位性がある。この機会をチャンスに変えるため、しっかりと取り組む。  

 長浜 光弘(ながはま・みつひろ)1961年5月20日、釧路市生まれ。85年東京工大を卒業し、道庁入り。2015年道建設部建築局長、18年住宅局長、19年道総研建築研究本部長兼北総研所長を経て4月から現職。

(北海道建設新聞2020年8月5日付1面より)


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