省人化 故障の早期発見に
システム開発のバーナードソフト(本社・札幌)は、映像監視ができない暗い場所や騒音が激しい工場で採用されている従来の音監視システムに、サーバーなしの単体で使える「エスカレイドコア」を追加した。本体に内蔵したAIが異常な音を検知し、警告音とシステム画面上で管理者に通知する仕組み。持ち運びしやすくなったことから監視の省人化や故障の早期発見を目指す。
従来品は水力発電所でパイプからの水漏れ監視に活用している。周辺がぬれている暗い場所は映像から穴を見つけにくい。各所に集音装置を設置して監視体制を構築。サーバー設置で複数の場所から送られてくるデータを一元管理して監視員の負担を減らした。
今回、監視場所を1カ所に絞り込んだサーバー不要の「エスカレイドコア」を開発。集音・判定を端末1台に集約するため、端末内にAIデータを組み込んだ。高価で場所を取るサーバーがいらないため初期費用とランニングコストが低く導入しやすい。7月から道内の砕石工場でテスト導入が始まった。砂利を作る装置の稼働続行による破損防止が期待されている。
導入時は集音装置で録音した1週間分の環境音をAIが学習。周波数と音圧を毎秒監視して知らない音が聞こえたら警告するシステムを組む。監視員の熟練度に左右されることなく常に音を監視できる。
聞こえる頻度が低い特定の音の学習に対応。正常な音はホワイトリスト、異常な音はブラックリストに登録する。現場をよく知る作業員と協力して定期メンテナンスや故障の音を登録すれば誤判定を抑えられる。省人化や事故防止のほか、ベテラン作業員の急な退職への備えになる。
監視結果はシステム画面上で確認できる。異常の度合いに合わせて縦の棒グラフが伸び縮みする。正常を緑、警告を黄、異常を赤で表示して視覚的に分かりやすくした。
本体は縦9・5×横6・5×厚さ3・5㌢で重さが150㌘。手のひらサイズのため簡単に設置場所を変えられる。サーバーなしの単体で動かすために8カ月かけてデータ処理を軽量化した。
専用ケースに入れて設置する。英国のRaspberry Pi社製のボードを採用。用途に合わせて防じん・防爆仕様などにカスタマイズが可能だ。人が入りにくい狭い場所でも監視できる。
耐久温度は0―50度で電源は100。現地調査から設置までは2カ月。
同社はエスカレイドコアの安定運用に役立てているリアルタイムネットワーク監視システムで侵入検知を得意とする「仮称・Tegnos(テグノス)IDS」を月内に追加予定だ。プロトコル監視とAIを組み合わせて不審な通信を検知。すぐに管理者に通知して社内の情報財産の流出や不正な操作による工場の停止などを防ぐ。自社の監視ノウハウで不具合を見える化することが狙いだ。
瓜生淳史社長は「音とネットワークの監視システムの導入を増やして事故や判断ミスを減らせれば」と話している。
(北海道建設新聞2020年8月5日付3面より)