深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り サンエス電気通信 宮田昌利社長

2020年08月17日 10時00分

宮田昌利社長

札幌、釧路軸に全道展開

 サンエス電気通信(本社・釧路市)を中核とするサンエスグループは、光英電気通信(本社・札幌)の全株を取得し、グループ企業であるシーエーブイ(同)の100%子会社とした。今後はサンエス本体も道央圏での営業を強め、札幌と釧路を両軸に道内全体や一部本州も視野に仕事を回す考えだ。グループを率いる宮田昌利社長に株取得の理由やグループ全体の方向性を聞いた。

 ―なぜ光英電気通信なのか。

 前社長の相沢隆通会長は、私どもの先代社長時代からの付き合い。2007年に当時の光映堂シーエーブイ(現シーエーブイ)を傘下に収めたが、札幌の弱電設備団体では相沢さんに助けていただくことが多かった。

 相沢さんや役員も高齢化してきたが、この会社には高い技術と豊富な経験が蓄積されている。後輩の指導・育成など熟練者でなければできない仕事もある。「われわれのグループに入りませんか」と声を掛け、順調に話が進んだ。

 札幌でのグループ化は光映堂シーエーブイ、後に同社が吸収合併した第一電波工業(本社・札幌)に続く3社目。

 光映堂シーエーブイは映像や音響、第一電波工業は空港管制に関連した無線誘導通信、光英電気通信は情報通信系機器の接続など、それぞれの分野で高い技術力を持つ企業。これらが一体的に動ける体制ができれば可能性が広がる。

 ―グループ全体が目指す方向性は。

 新型コロナウイルスは大きな転換期をもたらしつつある。デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と相まって、新しい会社の仕組みづくりはこれからどんどん増えるだろう。

 ホテルや学校などでは入り口へのサーマルカメラ設置が求められるが、昨年までは誰もそんなことを考えもしなかったはず。会社や技術者はオンラインに対応できないと立ち行かない時代になってきた。

 社会全体が大きな変革期にある中、次に必要となるのは新たな事業を企画・提案する能力。今後、ICTや人工知能(AI)、システム開発などに強い若い力を結び付けることができれば、さらに多様な事業展開が可能になる。

 ―なぜ本体ではなくシーエーブイの子会社に。

 サンエスは釧路の会社で、売り上げは官庁が7割を占める。札幌で民間企業とネットワークをつくるには、シーエーブイの方が動きやすかったというのが理由だ。

 しかし、今後はサンエス本体も道央圏での営業を強め、30年までには札幌本社、釧路本店という形にしたい。札幌と釧路を両軸として、道内全体や一部本州も視野に仕事を回したい。

 ―地元への思いは。

 広大な釧根地方は酪農拠点であるだけでなく、植物工場や陸上養殖、林業などに大きな可能性がある。

 サーマルカメラは牛の体調把握や発情管理など酪農にも応用でき、各種センサーとともにこれらを制御するシステムを構築すれば、経験がなくても1次産業に参入できるようになる。

 エネルギー分野では、自家消費できる小規模なふん尿バイオマスや風力発電などをもっと普及させるべきだ。木質バイオマスも本州に比べれば条件に恵まれている。

 地域がこうした取り組みで生産を増やし、付加価値を付けて外貨を稼ぐことをグループ全体でサポートしたい。

(釧路支社・武弓 弘和)

 宮田昌利社長(みやた・まさとし)1960年4月21日、釧路市生まれ。学習院大経済学部卒業後、東京でベンチャー企業を設立。帰郷後の88年に子会社のサンエスマネジメントシステムズを設立し、本体では2000年に社長就任。釧路根室圏まちとくらしネットワークフォーラム座長、NPO法人札幌ビズカフェ顧問なども務める。


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