求職者減少、求心力低下 採用難、立ち向かえ建設業
建設業の働き手不足に終わりが見えない。新型コロナウイルスによる不況で事業の縮小や人員削減を余儀なくされる企業が増え、失業率も上がってきたが、6月の建設業の有効求人倍率は上昇。むしろ採用難が簡単に変わらないことを印象付けた。ここ10年前後の雇用情勢データを分析すると、建設業が人材市場でじわじわと求心力を失ってきたことが読み取れる。危機の今こそ、地域の基幹産業としての存在感を取り戻せるか。
人材市場で今、「採用難から就職難へ」のシフトが起こりつつある。北海道労働局によると、6月の道内求人倍率は全職種ベースで0・93。求職者100人に対して93人分の求人しかないことを意味する。以前は好景気で求人が多く、倍率1以上が4年間続いたが、コロナ禍で4月以降、求職者過多が続いている。
だが、労働局の分類による「建設業・採掘の職業」4職種の求人倍率は4・13。5806人分の求人に対し求職者は1406人しかいない。建設は毎年春から夏にかけて倍率が上がる傾向があり、ことしも2月の2・68から毎月上昇中だ。
建設と全職種の倍率の差は、最近になるほど大きい。例えば13年4―12月は全職種で0・7前後、建設は1・2―2・39と今ほどの違いはないが、建設は年々上がり続け、昨年8月には4・96を記録した。
一因は、建設の求職者が減っていることだ。リーマンショック翌年の2009年6月は、職種分類が今と違うものの、専門技術職などを含む建設分野の希望者が約6600人いた。全求職者の5%に当たる。それがことし6月は同条件の集計で1989人。全体の2.5%にすぎない。
この10年の少子化で社会構造も変わり、各社がターゲットにしたい若年層は減っている。道内の15―29歳の人口を見ると、10年3月には82万6500人だったが、ことし1月は67万4100人に減少。この傾向は今後も続きそうだ。
状況は依然厳しい。だが、長引くコロナ禍で経済の縮小が見込まれる中、建設各社が雇用の受け皿として機能することは社会の要請でもある。情報通信など新興業種の求人増が話題になることもあるが、絶対的なボリュームは建設には及ばない。建設業界は今まで以上に、求人対策に知恵を絞るべきではないか。(経済産業部 吉村慎司)
(北海道建設新聞2020年8月13日付2面より)