外国人実習生5人 鉄筋技能検定2級に合格

2020年08月21日 10時00分

受け入れ企業が支援、言葉の壁を突破

 外国人技能実習生の実習期間を最長5年間とした2017年11月の技能実習法施行から2年半以上がたち、5年目を迎えた多くの実習生が締めくくりとして技能検定2級相当の試験を受験している。道内にいる鉄筋工の実習生も各地で随時技能検定2級に挑戦。8月上旬までに9人が受験し、ベトナム人5人が合格を手にした。実習生にとっては日本語の読解力が必要となる学科試験が大きな壁となったが、受け入れ会社の支援もあり見事に乗り越えることができた。(建設・行政部 大坂力、旭川支社・門間康志記者)

 鉄筋施工(鉄筋組み立て作業)の2級には、成建鋼業(本社・旭川)に勤めるブィ・ヒュー・ヒェップさん(30)とロ・タイン・フンさん(26)、中央鉄建(同・札幌)のグエン・タイン・ティエップさん(28)とグエン・ディン・ホアさん(27)、丹羽鉄筋興業(同・帯広)のレ・クアン・ダオさん(32)が合格している。

成建鋼業のヒェップさん
成建鋼業のフンさん(左)

 成建鋼業のヒェップさんとフンさんは、実技試験に向け本試験の1週間前から念入りに練習を重ねた。会社側も練習場所と部材を用意するなど全面的にサポート。初めは所定の時間をオーバーしていたものの、回を重ねるうちに時間内に完成することができた。

 しかし、2人にとっては学科試験の方がハードルが高かった。日本語で出題されるため、そもそも文章を読み解く能力が必要で、一般的な辞書には載っていない専門用語の理解も問われるためだ。

 そこで2人は分からない言葉を見付けると写真を撮るなどして収集し、スマートフォンの翻訳アプリを駆使して語彙(ごい)を増やし、試験問題は3級の学科より複雑になることを想定しながら勉強していった。

 その努力のかいがあって2人とも合格。ヒェップさんは「楽しい。(合格して)よかった」と満面の笑顔を浮かべる。

 中央鉄建のティエップさんとホアさんも、仕事の合間を縫って同社の石狩加工センターで職長の指導を受けながら実践さながらに練習した。

中央鉄建のティエップさん

中央鉄建のホアさん

 2人とも実技に受かったものの学科が不合格。試験にクリアできるだけの技術は身に付けていたものの語学力で引っかかってしまった。

 不合格の知らせに2人は落ち込んだが、ホアさんの上司である遠藤一也工事長は「日本人だって落ちるんだから。次、頑張れよ」と声を掛けた。そうした周囲の励ましもあり、学科試験に再チャレンジし見事合格を果たした。

 ヒェップさんは5月に帰国予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う定期航空路線の休止で帰れない状態が続く。フンさんは11月、ティエップさん、ホアさんは9月末に帰国予定となっているが、実際に戻れるかは不透明だ。

 将来について、ヒェップさんやフンさん、ホアさんは再来日の意志を示し、特にヒェップさんとホアさんは1級への挑戦も視野に入れている。

 中央鉄建の遠藤工事長は、ホアさんを「真面目でもの覚えが良く、教えたことはとにかく忘れない」と評価する。後から入った実習生にも親身になって仕事を教えるなど面倒見もよく、今では実習生だけで仕事を任すことがあるほどだ。再来日にも大歓迎で「(同社に戻った場合には)1級を間違いなく取らせる。そうすれば一職人として日本人とベトナム人の差はなくなる」と期待を寄せている。

(北海道建設新聞2020年8月20日付1面より)


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