自治体と連携、取組発信
住宅金融支援機構が提供する「フラット35」などが低金利時代の住宅購入を後押ししている。新型コロナウイルスの影響拡大で不安が広がる中、4月に北海道支店に赴任した東原文彦支店長に安心の住宅ローン提供に向けた今後の取り組み方針を聞いた。
―新型コロナウイルスによる融資への影響は。
4、5月の申請数は2割前後落ち込み、勤務先の業績不振などを理由に返済相談に訪れる顧客が多かった。緊急事態宣言が明けた6月の申請件数は昨年と比較して微増に転じ、ローン継続に関する相談は落ち着いた。しかし、首都圏などで再び感染者が増加している。ウイルスとの共存を強いられる中、動向を注視する必要がある。
上流の住宅販売状況は商機である春の大型連休の外出自粛が大きな痛手となった。秋以降を見据え、積極的なアピールが必要だ。それに消費者が食いつくかが、ことしの住宅産業の鍵を握るのでは。
―情勢を踏まえた今後の対応は。
災害や感染症拡大など不安な状況が続く。融資を受けている顧客には、返済を維持してもらえるよう一人一人と向き合い、ニーズに応じたメニュー、返済期間の変更を提案しなければならない。
新たな借り入れ検討に対しては住宅事業者と連携しながら、まずは安心して住宅購入してもらえるよう機構のサービスをアピールする。厳しい情勢は続きそうだが、困っている人に手を差し伸べる存在になりたい。
―道内でどのようなサービスに力を入れるか。
高齢化に伴いニーズ拡大が見込まれる満60歳以上の高齢者のためのリバースモーゲージ型住宅ローン「リ・バース60」の展開に力を入れたい。道内はリ・バース60の資金使途が特徴的だ。本州では分譲マンション購入や戸建て新築が多い中、全国と比較してリフォームのための利用率が3倍ほどとなっている。
北方型住宅をはじめ断熱性能などに優れた高性能の住宅を多く建設したことが理由として挙げられる。高性能であるからこそスクラップ・アンド・ビルドではなく、リフォームなど既存住宅を生かした展開が可能となる。
高齢者には、若い頃に建設した住宅を現状に合わせてコンパクト化し、住み続けたいといったニーズがあるとみている。
―道内の住宅流通の動きとアプローチは。
北海道は広いため移住・定住、子育て、空き家対策など各地域に異なる課題があり、自治体はそれに沿った住宅建設・購入補助を展開している。
住宅金融支援機構として自治体の補助を活用した住宅建設に対する金利引き下げなどで後押しする。現在は36自治体と連携協定を結んでいる。
協定を結ぶことで、道内自治体の取り組みを広くアピールできると考えている。少子高齢化が進む北海道はある意味課題の最先端地と言える。高性能住宅の技術とともに、住宅購入に向けた良い取り組みも全国に発信したい。
(聞き手・宮崎 嵩大)
東原文彦(ひがしはら・のりひこ)1967年岡山県生まれ。早大法学部卒業後、91年4月に住宅金融公庫入庫。東日本大震災後の2012年には震災復興支援グループ長として被災者の融資に関する業務を担当。20年4月に北海道支店長に就任した。
(北海道建設新聞2020年8月21日付2面より)