会社探訪記

 地域に根差した企業を不定期で紹介します。

会社探訪記 FRSコーポレーション 食、農業との関わり強化

2020年08月31日 12時00分

生物多様性維持がミッション

 FRSコーポレーション(本社・札幌)は、環境調査や空間解析のコンサルタント会社。最近は欧州製の高性能ドローンと3次元スキャナーを導入し、先進的な測量・調査事業を積極展開している。もともと植物や動物の生態と向き合ってきた企業だけに、生物多様性の維持は自社の将来を左右する大きなミッションと捉える。今後は食や農業分野との関わりを強め、生態系サービスの総合企業を目指す。

FRSコーポレーション社屋

 現社長の徳島秀彦さんら仲間4人で、2009年4月に設立した。社名のFRSは「フィールド・リサーチャーズ」の略称。フィールドは一般的な野山だけでなく〝世界〟の意味があり、「さまざまな世界や分野を調査研究する集団になりたい」という思いを込めた。

 徳島さんは長崎県佐世保市の出身。1990年代に脚光を浴びた遺伝子工学を学びたい一心で帯広畜産大に進み、傍ら地元の建設コンサルでアルバイトした。働くうちに段々と植物への興味が湧き、植物専門の調査会社で働くようになる。個人経営の小さな会社だったこともあり、29歳で札幌支店長を任された。

 図面描きから見積もり、営業まで昼夜を問わず汗した。人脈がどんどん広がり、業績は右肩上がりで伸びた。38歳の時、自分たちの可能性を信じて仲間と独立を決心した。

 環境調査は道路やダム、風力発電、建物などを造る際、自然への影響度を評価する仕事。植物調査は該当箇所でどういった植物が生育しているか調べ、特定種があれば保全対策の方法を検討する。11年の東日本大震災で業容が大きくなり、14年に東北支店を開設した。

 徳島さんは「設立時から〝調べる〟ことを仕事にするが、調べる道具や範囲は変わってきた」と話す。11年にデジタルステレオ実体視による植生判読を手掛け、13年は海外でメジャーになりつつあった船舶レーダーを使った鳥類飛翔調査の試験運用を始めた。

 植物調査は発注者や元請けから空中写真の印刷物を受け取り、植生図を作成するのが第一段階となる。だが受け取った空中写真が古いものだと参考にならず、現地調査へスムーズに移行できない。「最新の空中写真を自分たちの手で撮れれば―」。こうした思いから、13年にドローンによる空中写真の撮影事業に着手した。

 社会資本整備が維持管理時代に突入する中、環境調査の仕事は先細りすると捉える。同社では対策として橋梁やトンネル点検から派生する環境調査にも力を入れようと模索している。10年や20年後の先を見据え、新卒者を5年前から積極採用するようにした。

生態系サービスの総合企業を目指す徳島さん

 中長期的な視点で目指しているのが、生態系サービスの総合企業としての姿だ。現在は環境調査と空間解析が仕事。生物多様性や持続可能社会を考えたとき、既存の仕事は大気や水の安定、農業を中心とした生産環境の保全・改善に貢献できる。加えて食料を安定供給し、住みよい社会へとつなげていけば、生態系サービスの輪は完成する。

 17年に飲食事業へ参入し、札幌市中央区にカフェ「PAPA HIDEHIKO」をオープンさせた。子育て世帯でも気兼ねなく食事できるよう、心地よい空間を演出している。今後は有機野菜を作る道内生産者と連携し、食料の安定供給につながるシステム作りを確立させたい考えだ。

 徳島さんは「環境調査は発注機関にデータを収めたら終わりなため、仕事が表に見えにくい」と説明。「人間として肌感覚のある環境を考えたとき、畑と山の間にある里山を知ることだと思った。食べ物を作りながら他の生き物との共存を伝えることが、僕の最後の仕事だと思っている」と話す。

(北海道建設新聞2020年8月24日付3面より)


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