担い手確保へ種をまく 「URAKAWAyamori」
浦河町の家は自分たちが守る―。町内の建設関連業に従事する有志が集まり、「URAKAWAyamori」として活動している。地元での確かな経験と実績を持つ建設業者を一覧にまとめた冊子を作成したり、工作のワークショップを開催するなど、町民と業界の距離を縮める取り組みを展開。その先に見据えるのは、将来のなり手確保だ。
活動の中核を担っているのは、神馬建設の神馬充匡社長、大野木材の大野啓輔常務、マツダの松田剛之常務の3人。
3人とも、2010年ごろに札幌や首都圏から戻ってきたUターン組。それぞれ仕事を通じて知り合い、地域の高齢化と建設業界のなり手不足の深刻さを解決しようという志を抱いていた。
一番の課題は知名度の低さだった。家屋の新築、補修でも町内の業者より大手ハウスメーカーに依頼するケースが多いのが現状。しかし、浦河町は地盤の軟弱さや塩害、台風など地域独自の課題があり、それらを熟知しているのは地元の業者だ。
風土に合った施工ができる業者を冊子としてまとめることで、町民の住まいトラブル解決に役立ててもらう。それが業界を知ってもらう第一歩だった。
さらに、木育にも力を入れる。未就学児以上を対象に地元産材からスプーンや箸を作る体験を提供したり、小学校の出前授業で公園に行って材木を紹介したりした。
「すぐに建設業と結び付かなくても、大人になったときにこの思い出を胸に浦河に戻って来てくれれば」と大野さんは話す。加えて、親や教師にも建設業をアピールできるため、進路の選択肢として話題に上ることも期待できる。
今は町内に授乳室がない実情から、移動式授乳室作りに取り組んでいる。前段として、ベビーベッドと一体化させたベンチを作製。今後、町役場に設置する予定で、子どもの様子を見ながら、落ち着いて書類を読むことなどができるという。
親、子それぞれの世代に建設業の存在感をアピールし、将来的な担い手の種をまく。「浦河の町をつくる人を増やしたい」を合言葉に活動を続ける。
(北海道建設新聞2020年9月8日付9面より)