100年持つ五輪施設整備
北海道ファシリティマネジメント協会(HFMA)の新会長に、元札幌市副市長の生島典明氏が就いた。協会が札幌冬季五輪・パラリンピック招致などに力を入れる中、今後の抱負やファシリティマネジメント(FM)の重要性について聞いた。
―新会長としての抱負を。
札幌冬季五輪・パラリンピック招致の一環で2017年に札幌アジア冬季競技大会を開催し、副市長を退任した後、組織委員会の事務総長になった。こうしたこともあり、招致・成功させることに責任があると思っている。
協会が、札幌冬季五輪・パラリンピック招致に力を入れていることが会長を引き受ける原動力になった。FMに関する見識は高くないが、五輪招致の力になることが〝最後の務め〟だと思っている。
―HFMAの活動について。
北海道でのFMの普及・啓発が目的。これまでは新規ファシリティマネジャーの養成を目指し、資格試験の実力養成講座などを開いてきた。しかし北海道の合格率は30%台と低い。
このため20年度からは新規受験者のほか、過去に不合格となった人を対象に、増員に向けて裾野を広げようと考えている。道内340人のファシリティマネジャーを500人まで増やしたい。
―冬季五輪の招致に向け、FMの重要性が増すと思われるが。
現状のコロナ禍は向かい風だと思っている。東京五輪・パラリンピックが1年延期となり、開催に対するマイナスイメージが再燃した。理由の一つはお金がかかること。中でも施設整備に対する目は一層厳しく向けられるだろう。
100年持つ施設整備をすべきで、イメージをきちんと説明していかなければならない。FMの考え方はこういったとき非常に有効となる。
―個々の競技施設について。
どれも50年前の建物で老朽化している。よく「札幌がスケート場やジャンプ台の無い都市になっていいんですか」という問いを投げ掛けている。そんなことは誰も思っていないはずで、今の稼働率を見ても再整備は必要だ。五輪を一つの契機としてちゃんと使うことが重要になる。
72年のレガシーとして引き継がれているが、有効期限はあるはず。今の技術なら断熱性能や耐久性を上げられるため、より長持ちし、環境に優しい省エネ施設にできる。それでも〝無駄な施設でしょうか〟という話だ。
―道内各地で老朽化している公共・民間建築について、オーナーや管理者に求めたいことは。
札幌は72年で人口100万人、今は197万人。当時は成長期での施設整備だったのに対し、これからは人口減少や超高齢化に向けての施設整備となる。バリアフリーなど整備方法の考え方も変えていかねばならない。
―当面の目標を。
コロナ禍で、民間企業のオフィス需要がどうなるかは心配だ。オフィス離れが加速し、地方移転や在宅勤務が注目されている。
テナントビルのオーナーにとっては死活問題だが、移転先の地方にとってはビジネスチャンスになる。新型コロナウイルスがもたらす両側面をしっかりと捉え、FMの認知度を高められるよう取り組みたい。
(聞き手・佐藤 匡聡)
生島典明(いくしま・のりあき)1952年6月生まれ、北大法学部卒。札幌市の財政部長、市政推進室長、総務局長を経て、2009年に副市長就任。15年に退任した。
(北海道建設新聞2020年9月10日付2面より)