会社探訪記 サカシタペチカ 「炎と暮らす」ぬくもり 

2020年09月18日 12時00分

独特な和らぎ 現代生活を彩る

店内では各国の薪ストーブが所狭しと展示されている

 サカシタペチカ(本社・札幌)は、薪(まき)ストーブや暖炉などの販売から施工まで一手に引き受ける専門会社。薪の調達・販売も手掛ける。1990年代から暖炉や薪ストーブを本格的に扱い始め、全国でも老舗の部類に入る。炎と暮らす豊かな暮らしを勧め、札幌など都市部やニセコなどのリゾート地でファンを着実につくっている。

 前身は、江別市野幌を拠点とするれんが工事会社。れんが造りの住宅や倉庫、サイロなどを造っていた。現社長の坂下雅徳さんは1952年生まれの2代目で、90年ころからペチカ(ロシア式暖炉)などを取り扱う。

 建築設計の仕事に憧れ、約30倍の狭き門を通って東京理科大の建築学科に入学した。当時は大阪で日本万国博覧会が開かれるなど、全国各地で建築ラッシュにあり、業界はにぎわっていた。

 しかし就職先が気になり始める大学3年のころ、第1次オイルショックが起こり、企業の採用活動が滞り始める。東京の大手設計会社で働く夢が破れ、知人の紹介で札幌の設計事務所で働くことになる。

 勤め先は総合スーパーの設計などを多く手掛けていた。大型施設のため仕事はフロアごとの分業制で、だんだんと働くうちに自分の個性を出せない職場に対し、迷いが生まれた。独立後、父の誘いに応えてれんが工事会社の図面を描くようになる。

 そんな中、父が病に倒れ、れんが工事会社を継ぐかどうか選択を迫られる。「継ごうという意識がなく、設計の世界に戻ろうと考えていた。しかし働いている人の生活を考え、気持ちを固めた」と振り返る。

サカシタペチカ社長の坂下さん

 最初は、れんが工事の延長線上にあったペチカを設計・施工した。れんがから放射される遠赤外線によって、人の体や室内を暖める暖房器具。設置には間取りや配置が重要になり、設計事務所やハウスメーカーとの打ち合わせは必須。坂下さんは設計に携わっていたことで、スムーズに仕事を進められた。

 ログハウスなどウッドライフを紹介する雑誌を読んでいたとき、米国製の薪ストーブにくぎ付けとなった。バーモントキャスティングス社が作るブラウンゾリュートアクレイムという製品。すぐに長野の輸入元に問い合わせ、現地に飛んで北海道地区の正規代理店を任せてもらうよう口説いた。

 薪ストーブは設置の自由度が高く、ペチカや暖炉のように新築段階から綿密にプランニングする必要がない。既築のリフォーム工事にも導入でき、煙突を屋根に抜けない場合は壁を抜き、壁際に設置する方法を勧めている。

 宿泊施設やレストランで薪ストーブに触れ、その温かみと和らぎが癖になる人は多いという。「動物の中で、火を扱えるのは人間だけ。炎と暮らすことで人間としての本能やDNAを感じてもらえれば」と話す。

 顧客の多くは薪ストーブそのものが好きな人たちで、お金のあるなしは関係ないという。灯油ストーブに比べ、燃料(薪)を調達するのが手間だったり、タイマー機能が使えないなど、現代生活での使い勝手は悪い。それでも独特な温かみと和らぎは灯油ストーブには出せず、中には薪ストーブを付けたくて家を新築する人もいるという。

 「薪ストーブが特別なものではなく、どんな家にも普通に付くような文化になってほしい」と話している。

(北海道建設新聞2020年9月14日付3面より)


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