回転効率向上で管理負担軽減
グリーンテックス(本社・旭川)は、下水処理場から出る汚泥を特殊な発酵促進剤を使って無臭の堆肥に利活用する「G―TEXシステム」を開発した。発酵促進剤は100%天然素材で、高い分解力や消臭効果がある。約60日で堆肥化可能なため、広大なヤードを確保するなどの管理負担を軽減できる。下水処理場の臭気対策につながることから、道内外の自治体で広く使ってもらいたい考えだ。
下水処理場で汚泥(脱水ケーキ)が排出される直後に、促進剤を振り掛けて発酵を誘導。発酵促進剤はスラッジアップという名称で、米ぬかやゼオライト、バチルス菌、酵母菌などを独自培養して製造する。
下水汚泥は、空気にさらすと急速に腐敗が進み、悪臭が発生しやすい特徴がある。従来は処理場内の堆肥化施設まで運搬し、副資材と混合したり水分調整しながら発酵させてきた。しかし処理作業に至るまで1―2週間ほどかかるほか、堆肥になるまで半年から1年を要し、臭気やヤード確保など発酵途中の管理面でも課題があった。
G―TEXシステムは、下水汚泥が排出されると同時に発酵を促していくため、腐敗の余地がない。運搬時の臭気問題を解決するほか、約60日で堆肥化できるため回転効率を高められる。
既存の下水処理装置に、スラッジアップを自動で振り掛けるための添加器を取り付け運用する。添加器は場内のスペースに合わせてサイズなどを調整でき、自治体ごとの施設事情に柔軟に対応できるようにした。導入費は2000万円ほどを目安としている。
美瑛町は、町営の下水汚泥コンポストヤード整備に伴ってG―TEXシステムを先行導入。脱臭装置がなくても周辺地域への臭気問題をクリアできたほか、完成した堆肥は雨でぬれても臭わないため喜ばれているという。
同社が旭川医大に依頼した分析結果によると、下水汚泥の処理前は臭気数値972だったが、G―TEX処理後の60日目で84まで低下したという。大腸菌の検出もなかった。
牛ふん堆肥に比べて窒素とリン酸の含有量が多く、植物の生育に不可欠な銅や亜鉛も豊富に含まれていることが分かった。町では化学肥料の減量効果からコスト縮減が見込めるため、公共施設の維持管理や町内会の緑化活動など、段階的に利用範囲を広げようと考えている。
同社は土壌改良や緑化の分野で高い技術を持ち、完全無農薬の「彦一にんにく」の栽培でも知られる。佐藤一彦社長は「G―TEXシステムを事業の新たな柱として成長させたい。人口の多い少ないを問わず、さまざまな自治体が使いやすいシステムとなるよう、今後も検討を重ねる」と話している。
(北海道建設新聞2020年9月15日付3面より)