大型プレキャスト製品の製造能力増強へ、深川の工場に新棟
会沢高圧コンクリート(本社・苫小牧)は、PCを利用した建築分野に本格参入する。大型プレキャスト製品の製造能力増強に向け、深川市内の自社工場に新棟を建設中だ。将来的には3Dプリンター技術を使った部材が主要構造部として活用されるのを見込み、PC建築技術と融合させた新たな構造の確立に取り組む。
広里町3丁目1の6にある深川工場は、道北エリアでのプレキャスト製品供給の重要拠点。道北で本格化する風力発電やほ場大区画化事業に対応するため、大型プレキャスト製品の製造能力を増強する必要があると判断し、工場新築を決めた。
PC造、平屋、延べ1290㎡の規模。施工は主体、設備一括で伊藤組土建が担当。意匠設計はアーブ建築研究所、構造設計はジェーエスディー。全ての部材は自社の訓子府工場で製造し、PC工事一式を元請けの伊藤組土建から下請けする形で施工した。
コンクリート3Dプリンターを活用した製品を非構造部材として採用。同社によると、3Dプリンター技術を本格的に大型建築に利用するのは国内でも初という。
大型製品製造のため広い空間が必要な上、2018年の北海道胆振東部地震での被災経験を踏まえ、大規模災害に見舞われても構造が破壊されない〝フルPC構造〟とした。
同社は将来を見据え、コンクリート分野での積層造形技術の確立に注力。オランダ企業との技術交流を通してABB(スイス)製の大型アームロボット式3Dプリンターの導入や、自社独自にセメント系プリント材料の開発などに取り組んでいる。プリンターで製作した構造物は建築基準法上、主要構造部材として利用できないため、工場内の非構造壁として設置した。
同社の3Dプリンターは、速硬性の特殊モルタルをあらかじめ設定した位置情報通りにロボットアームを動かして積層させることで立体物を製作。特長としてデータさえあれば型枠なしで自由にコンクリート製品を製造できる。
この特性を生かし、非構造部材のデザインは、新棟建設に携わる社員の姿をスキャンしてデータとして加工。設計から製造、施工に至るまで一連の流れを表したレリーフ調に仕上げた。
工期は12月23日まで。21年1月の供用開始を見込んでいる。
(北海道建設新聞2020年9月24日付3面より)