好調の倶知安は10万円間近 工業地は2年連続プラスに
道は、2020年7月1日時点の道内基準地価を発表した。林地を除く宅地1021地点の全道平均変動率はマイナス0.5%で29年連続の下落。札幌市で上昇傾向が続いているものの、新型コロナウイルス感染症の影響で一部商業地の臨時休業やインバウンド観光客が減少し、経済活動の停滞が生じたことから上昇が鈍化して下落幅は10年ぶりに拡大した。2年連続で上昇していた商業地はマイナス0.4%で3年ぶりに下落。工業地はプラス1.4%で、2年連続の上昇となった。住宅地はマイナス0.5%とマイナスが続く。商業地の上昇率トップは、プラス32%の倶知安町北1条西2丁目18。冬期間のリゾート客の増加を見込んだ新規出店や北海道新幹線延伸などを含む公共事業の進捗(しんちょく)への期待を背景に全国3位となった。1m²当たりの価格は2万4000円アップの9万9000円で、10万円に到達間近となっている。
道内の調査地点(基準地)は1039地点で、内訳は住宅地746地点、商業地260地点、工業地15地点、林地18地点。
1m²当たりの全道平均価格は宅地で3万7300円だった。うち住宅地は2万円で、平均変動率はマイナス0.5%。23年連続で下落した。商業地はマイナス0.4%の8万8500円で3年ぶりに減少している。工業地はプラス1.4%の1万2300円となり、2年連続の上昇だった。林地は、高い上昇率を示した地点がありプラス0.9%となった。
地価が上昇した地点数は、住宅地が前年度から6地点増えて152地点、商業地は2地点少ない63地点、工業地は1地点増の5地点ある。下落地点数は、住宅地が8地点少ない423地点、商業地が10地点増の156地点、工業地が前年度と同じく5地点となっている。
■商業地上昇率は倶知安が全国3位
商業地で上昇率のトップは、プラス32%の倶知安町北1条西2丁目18。商店街や周辺の商業地で冬期間のリゾート客の増加を見込んだ新規出店や北海道新幹線札幌延伸工事の進捗(しんちょく)を期待する動きから、18年度から2年連続の全国1位だったが、前年度を34.7ポイント下回り全国3位となった。
道内2位は千歳市末広2丁目122の1ほか。低層の小売り店舗が立ち並ぶJR千歳駅に近い商店街で、人口の増加や利便性の高さから14.9%上昇した。3位はプラス12.5%の札幌市厚別区厚別中央2条5丁目3の8ほか。地下鉄新さっぽろ駅に近接する国道12号沿いの商業地で、駅周辺の再開発事業への期待感から前年度の8位から上昇した。
価格上位の順位に変動はほぼなく、1―10位は全て札幌市内。トップは地下鉄さっぽろ駅に近接する中央区北3条西2丁目1の13ほかの「NC・HOKUSEN北三条ビル」で、1m²当たりの価格は29万円上回る383万円だった。36年連続の全道1位となった。
■千歳自衛隊需要で住宅地が伸びる
住宅地の上昇変動率は、倶知安町樺山65の132ほかがトップに。市街地から離れた別荘地が点在する地域で、外国人による別荘地への需要が依然として高い。伸び率は前年度を37.5ポイント下回ったものの、1m²当たりの価格は1万7500円アップの7万7500円に上昇した。2位の千歳市栄町5丁目3ほかはJR千歳駅に近く、自衛隊関係者の需要が増加したことから、プラス12%。3位の札幌市厚別区厚別中央3条6丁目5の4は、地下鉄新さっぽろ駅に近く、駅周辺の再開発事業への期待感と割安感の需要を反映した。
4―10位では、プラス11.5%の札幌市手稲区西宮の沢1条4丁目12の14が4位にランクイン。JR稲積公園駅に近く、利便性や割安感を背景に、前年の17位から順位を上げた。また6位に前年46位だった札幌市手稲区新発寒7条9丁目1163の96が入った。戸建て住宅が並ぶ閑静な住宅地で、隣接する西区に比べて割安感からプラス10.8%と伸び率が上昇した。
住宅地の最高価格は、札幌市中央区宮ケ丘2丁目474の86で1m²当たり30万7000円。上昇率は9.3%で、全道1位は32年連続。
■空知旧産炭地など下落続く
一方、空知管内の旧産炭地などでは下落が続く。商業地の下落率1位は3年連続で夕張市清水沢3丁目2となり、0.3ポイント悪化してマイナス9.2%で、全国ワースト2位に降下。全国の下落率10位以内に空知管内から5地点が入り、人口減少や高齢化に伴う購買力の低下・流出による需要減退が下落の主な要因となっている。
住宅地の下落率1位は深川市納内町2丁目3528の19ほか。市街地から離れているため、市の定住政策による低価格宅地の分譲も数区画売れ残るなど需要が少なく、マイナス9.1%で、全国でも下落率5位に。
■江別市と帯広市で商業地の需要増
人口10万人以上の都市を見ると、札幌市の上昇率は商業地がプラス6.6%、住宅地がプラス6.1%。一部の商業地は新型コロナウイルス感染症の影響で経済活動の停滞が生じたことから上昇が鈍化。住宅地への影響はなかった。
江別市と帯広市は商業地の平均変動率の上昇幅が拡大した。江別市は1ポイント上昇してプラス2.7%に、帯広市は0.1ポイント上がってプラス0.7%となった。江別市は野幌、大麻、高砂地区の住宅地需要が高いことから、商業地もつられて上昇したとみられている。
(北海道建設新聞2020年9月30日付1面より)