社内に特定相談事業所を開設しサポート
障害者ももっと活躍できる場を―。板金業の屋根のナミキ(本社・岩見沢)は障害者の就職支援を積極的に展開している。社内に特定相談事業所を開設し、障害者の就労をサポート。自社での正社員としての雇用や就業研修も実施している。川原悟社長は「雇用側も障害者も互いが笑顔の関係になれたら」と話している。(空知支社・鈴木 穂乃花記者)
同社ではかねて、インドネシアやベトナム人労働者、高齢のベテラン技能者らを積極的に採用し、多様な人材が活躍できる組織体制の構築に力を入れてきた。
障害者の支援を考え始めたのは、現在、福祉関係の業務全般を担っている佐々木美和さんの入社がきっかけだった。佐々木さんは、川原社長の同級生だった縁で、福祉施設などの勤務を経て入社。前職での経験の中で、働きたくても働けない多くの障害者を目の当たりにしてきた。
その体験を聞いた川原社長は、「うまく会社の事業との接点を持たせたら就職のサポートができるのではないか」と考え、本格的な支援を開始することを決めた。
2019年には指定特定相談支援事業所「Relief Room あるく」を設立。障害者が安心して生活を営むことができるよう就職や生活全般の相談を受けている。これまでに120件ほどの相談を請け、件数は増加傾向にある。
相談者の適性と希望次第では、自社でも特別支援学校の生徒など相談者を受け入れ、研修を実施している。川原社長は板金工、鋼構造物工事業のほか、飲食業、宿泊業と幅広く事業展開しており、さまざまな就職の場を提供することが可能だ。
初めて研修生を受け入れた際は、板金部材加工を手ほどき。支障なく作業をこなす様子を見て川原社長は「自分の中にあった『障害者』へのイメージが覆った」と自分の中にあった無意識の偏見を実感。「障害者と共存する新たな(雇用)ビジョンを描ける」と確かな手応えをつかんだという。
ことし2月には片腕に障害のある男性を正社員として雇用。安全を守るため、危険を伴う作業は必ず他の社員がサポートするなど気配りを徹底。安心して働ける職場環境整備に努めている。
川原社長は、職人の修行時代から、会社を立ち上げ経営者として人材採用に当たる中で、1日で辞めていく人や、ミスマッチなどから途中で投げ出す人を数多く見てきた。そうした状況を振り返り、「障害を理由に労働の芽が摘まれるのは非常にもったいない」と、働く意欲のある障害者は今後、建設現場においても貴重な戦力になると指摘する。
人手不足が深刻化する社会背景を見通し、「障害者が働きやすい環境の創出で、建設業界が抱える問題解決の一端も担えるのでは」と思い描く。
今後は、自社での障害者雇用を積極的に進めるほか、さらなる支援の充実を目指して、ことし10月には就労継続支援事業所の設置を予定している。一般就労を目指す障害者が就労訓練をする場を提供する。
古い空き家をリフォームし、障害者の生活の場としてグループホーム「森」を開設。「あるく」の相談者だけではなく、他の事業所からの紹介を受けた利用者もおり、現在岩見沢市内4カ所で展開している。
活動は道内にとどまらない。支店のある栃木県宇都宮市や、自社でゲストハウスを営んでいる日光市の2カ所でもグループホームの設置と就労支援の拡大を視野に入れている。
(北海道建設新聞2020年10月7日付1面より)