本間純子 いつもの暮らし便

 アリエルプラン・インテリア設計室の本間純子代表によるコラム。

 本間さんは札幌を拠点に活動するインテリアコーディネーターで、カラーユニバーサルデザインに造詣の深い人物。インテリアの域にとどまらず、建物の外装や街並みなど幅広く取り上げます。(北海道建設新聞本紙3面で、毎月第2木曜日に掲載しています)

本間純子 いつもの暮らし便(1)街並みに調和する外壁の色

2020年10月12日 12時00分

 私はインテリアコーディネーターです。住宅のインテリアの相談を受けたり提案をすることが主な仕事ですが、外壁や屋根のエクステリアも守備範囲です。

 住宅街の街並みは、穏やかで落ち着き調和が取れているほど、多くの人が心引かれるようです。でも、その住宅の外壁を決める際にずっと気になっていることがありました。それは「目立つ色に」と希望されるお客様が意外に多いことです。

 道産子はシャイで引っ込み思案。セミナー終了後に「質問」と手を挙げる方はまれです。でも、本当は自己主張をするタイミングを計っていたのかもしれません。戸建ては個人の持ち物ですから〝外壁の色は好きな色に〟と思うのかもしれませんが、本当にそうでしょうか?

 住宅の内側は、基本的にプライベートな空間ですからインテリアは住む人の好みが基本です。奇抜な色使いにも、落ち着いた雰囲気にもコーディネートは可能です。そしてもちろん住宅の中では服装も自由。帰宅後はすぐパジャマかもしれませんし、お風呂上がりは裸でビールかもしれません。

 では、庭の花に水やりをするときはどうでしょう。裸はちょっと困りますが、ご近所の方と話をしても困らないような服を着ます。仕事に向かったりコンサートを楽しんだりするときは、行き先に合わせて服装を選びます。

 衣服には、他の人に見られることで、その役割を果たす社会的機能があるため、TPOを考えて服装を選ぶのは大人の常識でしょう。場違いな服装は人物評価に影響するため、〝自己主張もルールの範囲内で〟が基本です。TPOの根底にあるのは、見る人に不快な思いをさせない、相手を思いやる心遣いです。

 住宅の外壁も毎日多くの人に見られています。札幌市は大きな建物や構造物に対し色彩のルールを決めていますが、住宅の外装色については決まりがありません。市民の常識に委ねられています。基本的に自由ですが、好き勝手とは違って「見る人に不快な思いをさせない」ところは、ファッションの社会的機能と共通しています。

 「目立つ色」とは、どのような色でしょう。街並みで最も目立つ色は高彩度色です。道路標識が目立つのは理にかなっていますね。また、ライトトーンのピンク、水色、黄緑なども外壁に使うと目立ちます。

 一軒の建物が高彩度色になると、その街区の不調和感が大きくなり、街並みの評価は下がるという調査結果があります。目立つ色の住宅は、周囲を巻き込んで残念な風景をつくることになりますので、周囲と調和し、その建物も映える色を見つけたいところです。

 では、望ましい外壁の色はどのような色でしょう。私は、庭の植栽が美しく見える色彩をお勧めしています。北海道に住む私たちは長い雪の季節の中で、芽吹きの若い緑やそれに続く花々の色を心待ちにして過ごしています。

 住む人もその家の前を通る人も、春の木や草花の色彩を一緒に楽しみたいはずです。そのためには、外壁も門も塀も「目立つ色を木や草花に譲ってもいいのでは」と考えていますが、どうでしょう?

(北海道建設新聞2020年10月8日付3面より)


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