深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 函館湯の川温泉旅館協同組合理事長 金道太朗氏

2020年10月15日 09時00分

金道太朗理事長

道央、北東北から呼込を

 ここ数年、中国や台湾などインバウンド需要で好調だった函館管内のホテル業界。しかし昨年は台湾のエバー航空でのストライキや香港大規模デモなどの影響で外国人客の伸びが止まり、年明けからは新型コロナウイルスの猛威により大きな打撃を受けている。厳しい状況が続く中、業界の今後について函館湯の川温泉旅館協同組合の金道太朗理事長に聞いた。

 ―ことし前半のホテル業界はどうだったか。

 インバウンドは1月20日以降、中国ツアーのキャンセルが入り始め、2月以降ゼロになった。東南アジア勢が残っていたことから、2月の売り上げは前年同月比50%減にとどめたが、飛行機の減便なども相次ぎ、3月に60%、4月に90%、5、6月は95%ダウンした。本州客の減少も痛手だった。毎年2月に開催される「さっぽろ雪まつり」の時期は稼ぎ時だ。前後泊に函館を利用する本州客が、全てキャンセルとなり壊滅状態になった。

 ―春以降はコロナ不況対策も出てきたが。

 「どうみん割」の効果で7月は65%減、8月は60%減と下げ幅が縮まり、回復の兆しを見せた。7月の4連休は宿泊客の99%が道内から。湯の川地区では高級な客室から売れ、高級旅館ほど早く埋まった。函館市グルメクーポンも好評だった。飲食業の懐も潤ったと聞いている。

 これから秋の行楽シーズン。道央圏の人は「春は道南、秋は道東」とよく言う。雪解けが早い道南で先に桜を楽しみ、戻りながら2度春を味わう。この点、道南より道東の人に伝えたい。ことしは地元で秋を堪能した後、道南で2度目の秋を過ごされてはいかがだろうか。

 ―道南のホテルの今後をどう見るか。

 3、4年は苦労すると思う。コロナが収束し安心安全という雰囲気を得ない限り、旅行需要は伸びないだろう。

 函館市は半島で人口が少ないハンディがある。だが域外に目を向ければ、札幌を中心とする道央圏と北東北(青森、岩手、秋田の3県)を合わせて600万人を超える。ここからいかに呼び込むかが今後の鍵だ。

 ―具体的に何が必要か。

 ホテルも変わらなければならない。団体客向けの客室体制から、個人客も呼び込める設備改修が不可欠だ。コロナも含め、時代のニーズに合わせた環境整備を随時進めなければならない。

 旅館街は一つの旅館だけでは成り立たない。複数の旅館が、協力し合うことが重要。今後は、例えば町内会、旅館に関連しそうな異業種の人とも手をつなぎたい。コロナ禍中でどう活性化の動きを打ち出すか、時代に合わせた臨機応変な対応が求められている。

 ―行政に求めたい対策は。

 どうみん割やグルメクーポンのような地域支援策を今後もお願いしたい。旅行客はもちろん宿泊業、飲食業などのサービス業がそれぞれに恩恵を受け、企業が守られる。クーポンについては「なぜ宣伝しない」という声もあったため、またチャンスがあれば集客につなげるPRをしたい。

 2019年度に始まった「湯の川冬の灯り」イルミネーションの拡充にも期待している。官民で温泉街らしい整備を進め、商店街などとつながり、相互に潤う環境になれば幸いだ。(聞き手・佐々木 健悟)

金道太朗(かねみち・たろう)1950年3月24日生まれ。函館市出身。早大社会科学部卒。75年家業を継ぐため湯の浜ホテルに専務取締役として入社。82年代表取締役に就任。2004年から現職。

(北海道建設新聞2020年10月14日付2面より)


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