各社のブランド・組織が大事
武ダホールディングス(HD、本社・札幌)が9月16日付で林工務店(同・砂川)、7月29日付で日栄工業(同・苫小牧)、矢野電器(同・むかわ)の全株式を取得し、グループ企業を11社に増やした。矢継ぎ早のM&A(合併・買収)はどのような経緯で実現したのか。HDの武田幹郎社長(45)に聞いた。
―3社の中でも林は完工高約19億円と大きく、驚きの声も聞かれる。交渉はいつから。
今春、先方から事業承継の相談を頂いたのがきっかけだ。それまで特に接点はなかったが、空知の代表的な建設業者として存在はよく知っていた。仲介役を通して林節子会長と初めてお会いしたところ、後継者難から事業譲渡を検討しているとのお話だった。
―どんな形で契約をまとめたのか。
当社のM&Aは一方的な吸収合併ではなく、各社が築いてきたブランドや組織を大事にする。経営陣にも基本的に残ってもらう。林は大手同業とのつながりもあり、選択肢は複数あったはずだが、最終的に当社を選んでもらえた。新体制では林会長が相談役、私が会長になり、常勤の副社長として武ダの幹部社員が着任した。変えたのはそれだけで、田中敏文社長は続投。看板も従業員もそのままだ。
―武ダ側の利点は。
林は建築と土木両方に優れ、各社との技術交流で全体のレベルアップにつながる。また、札幌圏からアクセスのいい砂川に技術者がたくさんいるのも心強い。後で分かったことだが、林は当社グループの恵庭建設と昔、共同体で農業土木工事をやったことがあるそうだ。これもご縁というものかもしれない。
さらに言えば、林では技能実習の外国人が働いている。当社グループは今まで外国人を雇ったことがなく、経験やノウハウを学びたい。
―胆振の日栄、矢野はどんな経緯か。
やはり春に先方から打診を頂き、両社の社長だった阿部健二現会長とお会いした。2社とも設備業がメインで、苫小牧市やむかわ町から元請けで受注している地元の有力企業だ。完工高は合計で年7億円ぐらい。後継者問題より、会社をもっと発展させたいという前向きなお話だった。当社グループにとって設備業はちょうど足りない部分で、相乗効果は大きい。すぐに話がまとまった。
―3社の従業員との意思疎通は。
私と役員が各社を訪ねて、一人一人と面談している。特に林は95人と多いため日数もかかるが、グループの発展のためにはこうした直接のコミュニケーションが不可欠だ。
―今の武ダグループの規模は。
3社のM&Aで、従業員数は280人になった。採用活動も幸い順調で、来春は大卒中心に15人が入社する見込みだ。2021年7月期にはグループ総売上高は90億円を超える。M&Aを軸とした積極的な事業展開で、さらに大きく成長したい。(聞き手・吉村 慎司)
(北海道建設新聞2020年10月15日付2面より)