会社探訪記

 地域に根差した企業を不定期で紹介します。

会社探訪記 丸富テント工業 顧客に寄り添う技術力

2020年10月23日 12時00分

 丸富テント工業(本社・札幌)は、建設現場で使う養生シートやイベントで設ける大型テントなどを製造・販売する会社だ。最近は北海道でも夏の暑さが厳しくなっているため、シェード(日陰テント)に力を入れる。オーダーメードの1点ものが大半で、顧客から「こんなもの作れないか」と相談を持ち掛けられることが、仕事の原動力となっている。雨や雪、日差し、ほこりから街の大切な物や人を守る縁の下の力持ちだ。

高い技術力で、長持ちする製品をあれこれ作っている

 津村富夫さんが1952年に北広島町共栄(当時)で創業した。最初は馬具の製造・販売を担い、高度経済成長とともに地場の建設会社から建築用の養生シートの注文を受けるなどし、業容を大きくしていった。

 現社長の西塚建二さんは津村さんのおいで、80年に丸富テント工業に入った。それまでは衣料品会社の営業マンとして働いていたため、繊維には明るかった。その経験から、テント業界にもすんなり溶け込むことができた。98年に2代目を継いだ。

 お客さんから相談を受け、考えに考えを重ね作り込む仕事が多い。イベント用の大型テントから駐車場の防雪ネット、シートシャッター、トラックシート、横断幕など手掛ける製品は多様だ。

 悩みに悩んで新製品を開発しても、安価な規格品に後追いされることが多く、商売は決して楽でない。サイズや色、機能など顧客のニーズに合ったオーダーメード品を作ることで、市場に出回る規格品と差別化を図っている。

 最近は、ファーリングシェードと呼ばれる巻き取り式の日陰テントに力を入れる。夏場のオープンテラスなどに有効なアイテムで、台風など悪天候時はパッとしまえるため、使い勝手が良い。ホテルの庭や道の駅の休憩所、結婚式場などで使われるようになった。

 目下のコロナ禍は不安要素の一つだ。イベント業界が苦戦を強いられれば、テント製作の引き合いは減る。ホテルの宿泊客が減ればシーツなど洗い物も少なくなり、クリーニング業者が使うリネンカート用カバーの注文が少なくなる。じわじわと影響が及ぶことを心配している。

 そんな中、飛まつ感染防止用の透明ビニールカーテンを開発した。天井のカーテンレールに取り付けて使うため、掃除がしやすい。飲食店や医療施設、学校などでも安心して使えるよう、防炎生地でできているのも特長だ。

飛まつ感染防止用の透明ビニールカーテンに期待を込める西塚さん

 製品作りは裁断と縫製の技術力が物を言う。同社では職人によるミシン縫いのほか、高周波ウェルダーと呼ばれる溶着加工機を使い分け、製品を仕上げている。テント生地が持つ丈夫さに、確かな裁断と縫製の技術力が相まって、納める商品はどれも長持ちする。

 このため「10年前に作ってもらったのですが、同じものを頼めますか」など、懐かしい品と対面する機会はしばしば。商品としての回転率は悪いが、それが逆に信頼のバロメーターになっているともいえる。

 社長を含め社員9人で仕事を回す。人材育成の側面から資格取得に前向きで、職人の帆布技能検定だけでなく、事務職員にも知的財産管理技能士や情報セキュリティー技士の資格を取らせている。

 西塚さんは「お客さんの要望にどれだけ応えられるかが、うちの生命線。コロナで世の中は変わるかもしれないが、これからも前向きに頑張りたい」と話している。

(北海道建設新聞2020年10月19日付3面より)


会社探訪記 一覧へ戻る

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • オノデラ
  • 東宏
  • 川崎建設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,400)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,314)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,311)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (1,120)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,061)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。