三洋興熱(本社・帯広)が立川工業(同・札幌)の全株を取得した。管工事業者として3社目で札幌は初めて。十勝管内で数多くの設備工事に携わってきた企業としてここ数年、道内他地域の業者と手を携える背景にはどんな狙いがあるのか。笹井祐三社長(76)に今後の展開を聞いた。
―三光工業(本社・帯広)、ハチロ(同・留萌)に続き3社目となる。その狙いを。
立川工業とは仕事での直接的な関わりはなかったが、仲介者を通して承継先を探していると知った。創業65年を迎える老舗業者で、当社より早く管工事に携わり、札幌市発注工事を中心に取り組んできた。しかし、100周年を目指すには互いに今後の成長が鍵を握り、相互発展のビジョンを考える必要があった。
―具体的には。
業界の大きな課題である技術者不足への対応だ。人材確保が難しい中、資格があって現場経験が豊富な技術者とパートナーシップを結べたのは大きかった。
加えて札幌圏での情報確保が可能になる。十勝管内で仕事をしてきたため、他地域の工事や技術的情報は限定的だった。管外での業務拡大を検討する上で、こうした情報の有無は大きな差になると考えている。
―業務提携と捉えるのはなぜか。
全株を取得すると形の上では完全子会社化となるが、業務提携という言葉がふさわしいと思っている。それは〝親子〟という上下関係ではなく、共に手を取り合う〝兄弟〟のような関係だ。
契約後には立川工業の役員らの前で会社の屋号も待遇も変わらないことや、互いの良いところを発揮して伸ばしたいという思い、成長戦略の成果が出た際には社員に還元したい気持ちを伝えた。両社の持つ技術や情報を共有し、共に成長することが主眼だ。トップダウンで何かをしてもらうということではない。
―これまでの企業との関係性は。
当社は創業精神に「和合」を掲げ、社内のチームワークを大切にし、仕事を進めてきた。理想はわが社と提携各社が手を握り、横並びで前へ歩むイメージだ。先に提携した2社とは今も良い関係で仕事や情報共有ができている。
―今後の目標を。
今回の提携でグループの完工高は約23億円に上ったが、これで終わりではない。まだまだ互いに成長の余地はあると思う。新たな成長目標と実現に向けたビジョンを定め、管工事で道内中堅より上の位置を目指したい。
業務提携については、企業課題として技術者不足や事業承継を掲げるところがある。今回はその両方で手を携えた形だ。それぞれの悩みを抱える企業は少なくないし、管工事業界を見ても同様のケースが起こり得ると思う。
道内の地域で頑張っている管工事業者がいればネットワークを持ちたい気持ちはある。相乗効果を期待できるのであれば手を広げたい。
(聞き手・太田 優駿)
笹井祐三社長(ささい・ゆうぞう)1944年4月27日、幕別町生まれ。67年一橋大経済学部卒、トヨタ自動車入社。75年から三洋興熱に取締役として入り、79年に創業者である父・四郎氏から引き継ぎ社長に就く。帯広商工会議所議員会長なども務める。
(北海道建設新聞2020年10月30日付3面より)