開設後も協議重ね環境改善 設計担当者による継続的な関わりが奏功
山田総合設計(本社・函館)が設計を担当した社会福祉法人函館恵愛会のクレドホテル函館が、道の2020年度福祉のまちづくり賞の公共的施設部門を受賞した。設計担当者がホテル開業後も継続的に関わり、限られた予算の中で環境改善などに取り組んだことが功を奏し、3度目の挑戦での受賞となった。
17年にオープンしたS造、4階、延べ1290m²のホテルで、障害者が働く就労継続支援A型事業所の側面も持つ。障害者がホテルのスタッフとして働き、客室をはじめ館内の清掃、リネン類の管理などに取り組んでいる。
内装デザインや設計を担当したのは、同社で営業企画を担う山田かおり主任。ホテル部分は濃色の建材による内外装や、地元鉄工所が製作した家具と装飾品、アート作品などを取り入れ、シックな印象が特色となっている。
障害者の宿泊も想定し、1階にはバリアフリーの特別宿泊室を設けるとともに、全室に80㍉という広い間口を採用。スタッフによる清掃が行き届いていることなどから、多くの宿泊者が主要旅行サイトなどで高評価を付けている。
勤務する障害者向けに「楽しく仕事をしてほしい」と居室ごとに異なるカラーリングを施したり、自分がどこの階にいるかが分かるように廊下の内装の配色も変更するなど工夫した。施設内に設けた活動スペースにはホテル側とは対象的な明るい色の家具を配置することで、行き来するときに気持ちを切り替えられるよう配慮もしている。
山田主任は、開設後も法人と協議を重ねながら点字による案内表示を新設したり、フロントに車椅子利用者向けのテーブルを配置するなど、環境改善を継続。施設側では地元農協から花卉(かき)の選別作業を受託するなど地域社会との関わりも強めている。
福祉のまちづくり賞には18年度から応募してきたが、こうしたハード、ソフト両面の取り組みが評価され、今回の受賞につながった。
障害者の中には勤務経験を積み市内のホテルや行政機関で雇用された事例も出てきているといい、山田主任は「設計などを通して彼らの人生に貢献できたことはとてもうれしい」と話す。今後についても「さまざまな立場の人が交わるきっかけになる施設をつくっていきたい」と意欲を示しており、先進事例となることが期待される。
(北海道建設新聞2020年10月28日付11面より)