空き家で拓く未来

 道内の空き家を巡る状況が変わってきた。民間事業者の関わりが増え、障害者グループホームや外国人技能実習生の住まい、さらにはコロナ禍を背景とした地方移住・滞在希望者の受け皿など、活用方法が多様化している。空き家対策特措法の施行から5年過ぎたが、空き家の多くは依然として放置されたまま。少子高齢化で今後も増える空き家をどう扱うか。未来への手掛かりを探った。

空き家で拓く未来(中)新たな価値を創造

2020年11月05日 12時00分

飲食店、実習生寮、民泊 人呼び込む

 「カレー店、ラーメン店、クレープ店、障害者グループホーム、技能実習生の寮、全て空き家を活用して始めた」―屋根のナミキ(岩見沢)の川原悟社長(41)は、無人の建物から新たな価値を生み出した多くの実績を持つ。これまで取得した空き家は、本業の家屋修繕で知り合った街の人たちや、仕事仲間の情報提供によるもの。自前の建築技術を生かしてリノベーションし、事業多角化の場として利活用している。

 発端は2014年。自社工場新築のため購入した岩見沢市内の土地に、築30年ほどの空き家が残っていた。川原社長は「活用しなければもったいない」と直感し、ここで大好きなスープカレーの店を開こうと思い立った。

 「工場用地は空き家解体費を除いて安く取得できた上、自社で工事したので初期投資があまりかからなかった」。こうしてオープンした「スープカレーくーかい?」は、土日になれば100人以上の客が訪れる地域の人気店に成長した。

 店の繁盛とともに「空き家をうまく使う板金業者がいる」とのうわさが立ち、物件所有者から相談が相次ぐようになった。その中から好立地の物件を選び、飲食店からグループホームまで次々と事業展開した。

 最近では19年春、自社で雇う外国人技能実習生の住まいとして空き家を整備した。インドネシア人とベトナム人で計6人。「狭い部屋に詰め込むことは絶対にしたくない」と、戸建て2棟を確保した。すると、快適そうな実習生の様子をSNSで見たインドネシア出身者から、就労希望の連絡が舞い込んだ。新たに特定技能外国人として受け入れることになり、目下3棟目の住宅を整備中。もちろん空き家だ。

 人口が減りホテルや旅館がなくなった地方では、宿泊インフラとしての空き家活用に期待がかかる。道東の美幌町では9月、町が募った補助金申請に町内の不動産業、マースが手を挙げた。

 募集は、空き家を民泊などとして整備し、移住体験に向けて5年間活用する町民や事業者に、最大500万円を補助する内容だ。マースは築52年の古民家を取得済み。補助金を活用して民泊にリノベーションする計画を立案。増田昭春社長(47)は「何もしなければ解体されていた建物だが、町全体を見渡せる高台にあり、手を加えれば民泊として生かせる」と意欲的だ。

 マースは設立からまだ2年の若い企業だ。地元に不動産業者がいないことを危惧した増田社長が起業。少子高齢化が進む町内で、空き家の流通・活用という理想を描く。同社の社屋もまた、空き家だった物件だ。

美幌町内の空き家活用を描く不動産業者マースの社屋もかつて空き家だった

維持管理代行、ふるさと納税返礼に

 誰も住んでいない建物をどう維持管理するか。ここに目を付けた民間ビジネスも広がりつつある。北見市に本社を構え、美幌も営業エリアとする不動産業者セクトは、月額5000円から簡易清掃、建物の目視点検、換気、通水など空き家管理を請け負うサービスを展開している。

 同社は昨年、L&F(千葉)が運営する空き家管理の全国ネットワーク「日本空き家サポート」に加盟して事業を開始。セクトの浜口雅之常務は「まだ受注件数は少ないが、物件所有者と接点を持てることで今後につなげられる」と将来性を語る。

 こうした動きから着想を得た美幌町は、この空き家管理サービスを全道で初めてふるさと納税の返礼品とする方針だ。町外に住む空き家相続人らに適切な管理を促す狙いで、本年度内にも実現する。

 空き家に次なる展開をもたらすには、物件を流通させる仕組みづくり、またそのための関係者間の連携が必要になる。そうでなければ、「地域に眠る宝」を見逃すことになりかねない。

(北海道建設新聞2020年10月27日付1面より)

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深掘り 屋根のナミキ 川原悟社長(2020年11月25日)


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(本連載は経済産業部の宮崎嵩大、武山勝宣、吉村慎司、空知支社の荒井園子、室蘭支局の高橋秀一朗、網走支局の堀内翼、福田浩平が担当しました)

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