会社探訪記

 地域に根差した企業を不定期で紹介します。

会社探訪記 札幌硬石 砕石ファン増やす使命

2020年11月13日 12時00分

身近な活用策をSNSで発信

 札幌硬石(本社・札幌)は皿や箸置き、ドアストッパーなどの石材加工品を扱う会社。砕石業を営むハラダ産業(同)の関連会社として2016年に設立した。〝砕石ファン〟を増やすことが札幌硬石の役割と捉え、自然石の身近な活用策をSNSなどを使って発信する考えだ。

札幌硬石のドアストッパーを手にする藤野社長

 札幌市南区の硬石山で採った良質な天然石を原料にする。ハラダ産業は1924年ころ、石工の安保寅雄氏が石材業を手掛けたのが始まり。43年に札幌硬石として法人化し、99年に現在の「ハラダ産業株式会社」に社名変更した。

 ハラダ産業の藤野徹弥社長は、一般消費者向け販売を担う新会社の社名を「札幌硬石」とし、21年ぶりに自社のルーツを復活させた。「硬石山の石をアピールするとき、札幌硬石の社名に回帰するのがストレートな方法だと考えた」と振り返る。

 旧・札幌硬石は戦時中、帝国海軍の千歳第2、第3飛行場の滑走路工事で砕石を供給した。戦後は、真駒内にあった米軍・第11空挺師団の駐留基地(キャンプクロフォード)へ砕石を供給。46年に日本鋪道からジョークラッシャーを借り受け、札幌で初めて砕石の生産・販売を手掛けた。生産量はピークの62年ごろで年間60万―80万㌧に上った。

 生産する砕石類は、昭和や平成、令和になっても街のあちこちで使われている。積み石や景観石として、道庁赤れんが庁舎や豊平館、札幌もいわ山ロープウェイ、創成川公園など、地域の景色を織りなしている。

 新・札幌硬石は、より生活の身近なところで砕石に触れてもらおうと長皿や小皿、箸置き、ドアストッパーなどを販売する。いずれも自然石の風合いを生かした製品。最近は各種サイズの景観石や重さ1㌧超の巨石も売り出す。

 「これまで発破直後に採れる巨石は置き場に困るため、砕いて道路用や生コン用の骨材にしてきた。今は自然との親和性を好む人がいて、できるだけ原石に近い状態でストックするよう現場に求めている」と藤野社長は話す。割栗石は河川改修などで使用される機会が増えていて、その風合いが見直されている。天然石を取り巻く市場感はまずまずのようだ。

 それでも「今後も土木や建築用としての需要がメインで、消費者向けの小売りが本業になるとは思わない」と説明。「札幌硬石の役割は砕石ファンを増やすこと。いろいろな風合いがあるのが硬石山の石の特徴。これからは〝こんな使い方もできますよ〟とか、自然石の身近な活用策をSNSなどで提案したい」と話す。

 最近、ハラダ産業の札幌事業所は見学希望者が後を絶たない。同業の砕石事業者から地質や歴史学者、行政関係者など訪れる人はさまざま。ファッションブランドのCM撮影でも使われた。

大都市の札幌で異空間を放つ南区の硬石山

 「大都市の札幌で、地表があらわになった場所は異空間。普段、仕事場としている僕たちにとっては見落としがちな財産なのかもしれない」と話す。まだまだ砕石業には未知なる可能性がありそうだ。

(北海道建設新聞2020年11月11日付3面より)


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