難病越え、農園開設に挑戦 農業研修生・後藤大尭さん

2020年11月18日 12時00分

岩田地崎建設や道庁での勤務経験を生かす

 「どんな人も幸せな気持ちになってもらえる自分の農園を開く」―夢に向かって汗を流す農業研修生の後藤大尭(ひろあき)さん(29歳)は、厚生労働省が難病に指定するクローン病の患者だ。13日には農園開設に向けて、ネットで資金を募るクラウドファンディングを開始した。大学卒業後、希望を胸に岩田地崎建設(本社・札幌)に入社したが、その未来は大病に絶たれた。それでも前を向く後藤さんは今、新たな挑戦の一手を打つ。(経済産業部・宮崎 嵩大記者)

 高校卒業後、北見工大に進学。人と関わるのが好きで「多くの技術者たちと協力するトンネル工事の仕事をしたい」と将来を思い描いていた。

 身体に異変を感じたのは、岩田地崎建設からの内定を得て半年ほど経った時だった。1週間高熱が続き、北見市内の病院を受診。すぐに札幌市内の大学病院での受診を勧められ、「クローン病」と告げられた。大腸や小腸などに炎症や潰瘍を引き起こす原因不明の難病。「疲れるとほぼ発熱。ひどい時は腹痛で一日全く動けなくなる」と自身の症状を語る。

 病気を会社に報告すると「考慮するから何でも言ってほしい」と声を掛けられ、2014年4月に入社した。希望していた留萌トンネルの現場に配属され、仕事に打ち込んでいたが、疲れからくる症状で業務後に血便が出ることもあった。「何かあったら現場に迷惑を掛けてしまう」。不安と焦りが重くのしかかり、15年秋に退職を決意。身体的なリスクが少ないと感じた道庁に転職した。

農園開設に向けて農業を学ぶ後藤さん

 室蘭建管登別出張所の技師として、治水工事の設計書作成、工事監理、予算管理などを担当。「自然災害が相次ぐ道内を守る仕事」と充実感があったが、災害時の緊急対応が求められる道職員の業務は身体的な負担を伴った。他部署への異動も打診されたが「これ以上迷惑は掛けられない」と、19年6月に退職した。

 後藤さんには妻と1歳の息子がいた。「どう家族を支えていけば良いのか」。途方に暮れていたある日、タマネギ農家を営む友人が「うちの土地で、フルーツ観光農園をやってみないか」と声を掛けてくれた。新たな夢が生まれた瞬間だった。

 22年7月に江別市内でイチゴとブルーベリーを栽培する農園を開設する予定。現在は島田農園(本社・恵庭)でイチゴ栽培などを学ぶ。「果物狩りを楽しむ客、難病患者やその家族が集うコミュニティースペース」が後藤さんの描く農園の姿だ。つながりを求める人々が気軽に立ち寄れるよう、アイスクリーム店の設置なども考えている。

 果物栽培には、建設現場で培った「ICT」活用の経験を生かす。視察した愛知県のブルーベリー農園では、土の栄養値、水の量などをICTで管理していた。そのブルーベリーは「今まで食べたことのないおいしさだった」と衝撃を受けた。

 建設現場でICTを駆使したコンクリート品質管理などを経験した後藤さんにとって「ICT」や「数値」は身近な存在。近隣農家は「長年の経験」を基に品質管理をしているケースが多く、農業経験の差を埋める武器として期待している。機械化による作業負担軽減も難病を持つ後藤さんにとって大きなメリットだ。

 ブルーベリーの苗を買いそろえるため、目標額125万円でクラウドファンディングを開始した。既に約200万円集まり、400万円を次なる目標に据える。増額分でバリアフリートイレを設置する。「多くの人に支えられてきた。次はその優しさや温かさを自分が提供したい」。かなわなかった建設業での夢を、果実とともに実らせる。

 クラウドファンディングサービスREADYFORで支援できる。募集は12月21日まで。URL(http://readyfor.jp/projects/willbeallright)

(北海道建設新聞2020年11月17日付1面より)

 


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