空き家、ビジネスの舞台
建築板金にとどまらず、飲食や福祉などさまざまな異業種展開を進める屋根のナミキ(本社・岩見沢)。全国で問題となっている空き家をリフォームしながら新ビジネスの場として活用し、事業拡大を図っている。地域課題を解決しながら街の魅力発信にもつなげたいと取り組む川原悟社長に今後の経営戦略を聞いた。
―建設業だけでなく他業種への進出に意欲的だが。
プロのバイクレーサーを目指して2001年から08年まで過ごした栃木県で、板金の修行もした。北海道に帰ることを決めたとき、板金屋としてどうやったら同業者を追い抜けるのか悩んだ末、建築の枠から外れることでアピールできると思った。そこで以前から好きだったスープカレーを出したいと考え、岩見沢市内で築30年くらいの空き家をリノベーションして店をつくった。
レシピは知り合いに教わり、妻とアパートの一室を借りて半年くらい研究し、14年にオープン。休日だと1日100人くらいの客が訪れる地域の人気店になった。これが最初の異業種進出で、その後はスープカレーラーメンや、地元になかったクレープ屋も手掛けた。飲食店は道内だけでなく宇都宮市や台湾にも出店している。
―各事業全ての施設で空き家を活用しているがきっかけは。
屋根など家屋の修理をしているため、雨漏りしたから来てほしいといった連絡が多い。その際に「この家、売り手が決まらないから直せない」「壊すしかないけどもったいない」といった高齢者らの声をよく聞いていた。このままでは過疎化が進み、街に何もなくなる。地元に何かしたいという思いで、そのような物件を見掛けたら自分たちで直して活用することを始めた。
建築のノウハウがあるからこそ自前で空き家をリフォームできるし、事業を始めるにも初期投資を抑えられる。建築関係の業種であることは大きな強みだ。
―どうやって物件を探すのか。
地元のつながりや、仕事の関係で見つけることがほとんど。北海道空き家情報バンクの存在は最近になって知った。空き家活用は立地が良かったりするが、古民家がほとんどでとにかく寒い。水道管の凍結によるトラブルが多く、管理には手間暇は掛かる。
―空き家を使ったビジネス拡大の考えを。
道内で増えている廃校になった学校を活用してみたい。廃校した学校に住んでいる人がいて、グラウンドに氷でできたバーなどを造ったりしていた。ビジネスにつなげて地域の活性化にも貢献できればと考えている。
それと、札幌市円山動物園の近くで空き家の話を聞き付け、障害者福祉事業で活用できないか検討中だ。こうした活動から人の雇用など次のステップにつなげたい。希望としては動物園での就労に結び付いてくれればいい。これからも空き家を活用したビジネスは続ける。理念として「可能性は無限」を掲げていて、自分たちのできる可能性を広げたい。
(聞き手・武山 勝宣)
川原悟(かわはら・さとる)1979年5月8日生まれ、岩見沢市出身。駒大岩見沢高卒業後、2001年に宇都宮市に移り、建築板金業会社で働きながらプロのバイクレーサーを目指す。05年に屋根のナミキを創業。09年に岩見沢に戻り11年に法人化した。
(北海道建設新聞2020年11月24日付2面より)