価格と仕掛け 可能性切り開く
サハリンでも道内同様、11月に入って新型コロナウイルス感染症の新規感染者が増加傾向となっている。現在州内では公共の場でのマスク着用、65歳以上の自宅待機、多人数の集会の制限といった規制が再び厳格化された状況にある。
そんな中、2020年度3回目のチャーター貨物船が稚内港へ入港。9日に貨物の積み込み作業を行い、コルサコフ港へ向け出港した。積み荷は主に、しょうゆやみそ、菓子などの加工食品である。これらは、12月に北海道がユジノサハリンスク市内で予定する物産展「北海道フェア」向けの商品やサンプルで、到着後ロシア当局の認証を得る見込みだ。
今回の総貨物量は0・5㌧と少量だが、サハリンでの北海道物産展などに供される食品はほぼ毎年、稚内―コルサコフ間のルートで送られ、航路は今回もその役割を果たした。輸送経路が事実上このルートに固定されていることは、本市にとって大きな成果の一つである。サハリンへの海上貨物輸送において、稚内港発のメリットが評価された結果と考える。
20年度は7月以降3回の輸送が行われたが、あらためて品目を振り返ると、生麺、メロン、スイカなど食品の割合が高い。これは、本チャーター船が出港日を事前に確定して公表し、なおかつサハリンとの距離が近く約12時間で輸送できるため、生鮮品など厳格な品質管理が必要な商品の輸送に適していることが、大きな理由である。
さらなる需要の創出に今後何が必要かというと、それは一に価格、二に価格である。以前のサハリンでは「高品質の日本食品」という言葉に一定のPR効果があったかもしれないが、私の感覚では、日本のものなら高くても売れて当然という考えは、過去のものである。世界各国の安価で高品質な食品がきれいにパッケージングされて、清潔な店内に整然と陳列される様は、過去のサハリンしか知らない方には驚きではないだろうか。
サハリンに大企業は少なく、求められる商品ロットが多くないため、輸出に係る諸経費を考慮すると価格が高くなるのは仕方がない面がある。しかし、そこは工夫次第である。現地には、日本や北海道を感じさせる商品の装丁やパッケージなどで、他との差別化を図りたい企業も存在する。その場合、単に商品を売るより、消費者への効果的な見せ方も含めて、魅力を総合的にプレゼンテーションする方法も提供することで、商品に付加価値を与えられる。
またコロナ禍の今、オンラインやデリバリーのサービスがサハリンでも活況を呈している。現地の新しい状況に適応した事業アイデアを、北海道側で考えることも可能ではないか。
要は、道内企業と付き合うメリットを相手に感じさせるための仕掛けが必要ということだ。これはどの業界、どの分野にも言えるイロハかもしれないが、相手側の事情をより深く知る努力が求められる点で、対サハリンは未開拓の部分があり、それだけ可能性も感じる。相手は自分より先に進んでいる、学ぶのは自分の側である、という謙虚な姿勢があれば、商機はもっと見いだせる。
(北海道建設新聞2020年11月25日付3面より)