北海道エアポート、初めての降雪期

2020年12月10日 10時00分

除雪ノウハウ受け継ぎ 現場が新体制を支える

編隊を組んで滑走路を除雪する(北海道エアポート提供)

 道内7空港の運営を始めた北海道エアポート(HAP、本社・千歳)が、初めての冬を迎えた。滑走路などを管理する新千歳、旭川2空港では、降雪への対応が本格化する。経験のないことしは安全を最優先して新たな取り組みをやらず、前体制のノウハウを引き継ぐシーズンとする。現場を仕切る受託業者や、作業員の多くは前年と同じ。関係者がそれぞれの持ち場で変わらぬ仕事をすることで、新体制を支える。(建設・行政部 瀬端のぞみ、経済産業部 吉村慎司記者)

 今月1日。新千歳の除雪作業をHAPから受託する地崎道路(本社・東京)が、作業員160人と季節雇用契約を結んだ。同社は旧千歳空港時代から路面整備や除雪を手掛け、HAP体制でも業務を担う。雇用は2021年3月中旬まで。約60人が周辺地域の農家だ。多くが毎冬働くベテランで、中には30年選手もいる。

 除雪作業員は一人前になるまで数年かかるという。地崎道路の岩田哲幸空港事業課長(48)は「敷地内のどこに何があるか、それぞれの名称を完全に覚えるだけでも1シーズンでは難しい」と明かす。

 除雪本番では雪や気象の状態が常に変わる。役に立つのは経験だ。複数の作業員でチームをつくり、ベテランが主導して機械を動かす。メイン滑走路には大型除雪車の編隊を組んで臨む。

 雪が激しくなれば自宅にいる作業員も呼び出される。90分以内に現場に着くのがルールだ。厚真町の畑作農家、尾形精一さん(61)は今冬でキャリア25年になる。「非番でも天気予報をずっと気にし、呼び出しがありそうなら酒も控える。それがこの仕事」

 旭川空港の除雪は、やはり長年の実績を持つ丸駒シビルサービス(同・旭川)が受託する。地元の農家らを雇い入れ、これまで99%を超える定時運航率を支えてきた。ことしのチームは39人。新しく若い世代が入り、平均年齢は40代という。

 旭川は千歳と比べて冷え込みが激しい。融雪剤を使って解かしても短時間でまた凍る。強く削ると舗装を傷めてしまうため、固まらないうちに素早く除雪しなければならない。旭川ならではのノウハウだ。

 2空港の除雪業者はそれぞれが高い技術を持ちながら、今まで横のつながりはなかった。だがHAPの鶴岡稔久空港部長(64)は「この冬の各空港の除雪作業を来春以降検証して、今後どんな工夫ができるか協議したい」と意気込む。来年以降、業者間の情報交換の場ができる可能性もある。

 除雪は運航の安全性に直結するため、本来、新手法の試行や導入には慎重さが求められる。ただ、民間の発想で見直せる部分も少なくない。例えば、あまり使われていない区域の除雪を簡略化し、利用頻度の高い区域を重点的にする。また、複数の空港で使う融雪剤を一括購入して単価を下げる、などだ。除雪車両の更新なら、予算策定段階から現場の声を聞くといったことも考えられる。

 現場には、単なる冬場の労働にとどまらない、やりがいもあるようだ。新千歳の尾形さんによれば、時間に追われて滑走路での作業を終えると、しばらくして南の空に飛行機の明かりが小さく浮かぶという。光が近づいて機体となり、路面に滑り込む。続いて離陸機が次々と動き始める。「体は疲れるのに、この仕事をしてよかったといつも感じる」

 立場はさまざまだが、共通して目指すのは航空機の安全な離着陸。雪と向き合う日々が始まった。

(北海道建設新聞2020年12月9日付1面より)


関連キーワード: 空港 空港民営化 除排雪・雪対策

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