信号なく停電の影響受けず
2014年の道路交通法改正で運用が始まったラウンドアバウト(環状交差点)。道内では上ノ国町と浜頓別町で導入している。国道、道道、市町村道と合流・分岐するラウンドアバウトは、環状の道路(環道)の走行車両に優先権があるため、滞留による追突事故を回避、信号機がないため災害時に影響を受けないメリットがある。一方、積雪寒冷地特有の課題や広い用地の確保、導入までに時間がかかるものの、重大事故の抑制といった効果が期待されることから、地域の交通課題解決の一つとなりそうだ。(建設・行政部 出崎 涼記者)
ラウンドアバウトは、交差点の中央に円形地帯(中央島)を設けた円形交差点の一種で、信号機や一時停止などで運転を中断されない。車両は中央島に沿って環道を時計回りに通行し、環道の車両に優先権がある点が特長となっている。
通行速度の低下で交通事故の被害が軽減するほか、信号機や一時停止線を設けないため、待ち時間が減り、災害時には停電の影響を受けないなどのメリットがある。一方で、渋滞した場合は全方向へ進行できなくなるなどのデメリットがある。
国土交通省は、導入の目安として、1日の交通量が1万台未満であることとしている。交通量の多い交差点では、混雑する可能性があることから、効果が十分に発揮できる適切な箇所で整備する必要がある。
道内の動きを見ると、初めて函館開建が上ノ国町の国道228号大留交差点で導入。同交差点は国道・道道・町道がつながり、一時停止線前後に2つの車道が合流するなど複雑な交差点であることから、交通事故対策として19年10月に整備した。
稚内開建でも浜頓別町の国道275号浜頓別交差点で20年10月に整備。19年に道の駅がオープンしたことで交差点の交通量が増加し、信号待ちに伴う車両滞留などの課題があったことから導入した。
道建設部は、除雪で堆積した雪がドライバーの視界を遮るなど積雪寒冷地ならではの課題があり、具体化には至っていなかったが、ことし10月の環境保全を考える協議会(道主催)で北海道日本ハムファイターズのボールパークに接続する、きたひろしま総合運動公園線整備で採用する案を示した。札幌建管は試合開始前・終了後の車両の進行がスムーズになると期待している。現在は駐車場利用者の分散化に向け、ソフト対策を協議中だ。
上ノ国町と函館開建は、導入までに住民説明会の実施や寒地土木研究所によるセミナーを開催するなど、地域住民の理解と協力を得るために時間を費やした。整備後の効果について町の担当者は、「交通の回転が良くなり、町民からは利用しやすいという声が多い」と効果を実感する声が上がっている。
道内では3市町以外で導入を検討している動きはないものの、ラウンドアバウト導入は地域の交通課題解決の一つになり得る。
北海道開発局では今後、冬季の通行状況など経過観察の上、事業にフィードバックしていく考えだ。
(北海道建設新聞2020年12月11日付1面より)