観光需要回復へ向け奔走 疲弊する道内経済の支えに
大勢の人を乗せた飛行機が旅立ち、中では多くの人がお土産とキャリーケースを持って出歩く-。新千歳空港で当たり前だった景色が一変した。新型コロナウイルス感染症の影響だ。変化したのはもう一つ。北海道エアポート(HAP)が新千歳を含めた7空港の運営を開始したこと。感染症で落ち込んだ観光需要の回復に向けて空港の所在自治体や関係機関と奔走した。
ことし1月18日、新千歳、旭川、稚内、釧路、函館、帯広、女満別の運営開始に伴う記念式典を新千歳空港で開いた。鈴木直道知事をはじめ空港所在自治体の首長が一堂に会した。観光地として人気があった北海道を外国人観光客が後押しする中、満を持しての民営化。
その直後、新型コロナウイルスが広まった。外国人観光客から徐々に本道を訪れる観光客は減少し、要の新千歳は国際線就航数が4月から現在までゼロ。国内線も5月は前年同月に比べ93.7%の激減。国や道の観光支援施策や「HOKKAIDO LOVE!プロジェクト」などの独自施策で10月には減少幅を前年同月比45.2%減まで縮めた。
ただ、感染症が与えた影響は予想以上に大きく、5月末に蒲生猛社長へインタビューすると、その段階で既にホテルや空港ビルへの積極的投資を見送る考えを示していた。事業計画の見直し作業にも取り組んでいる。
旅客数の減少は航空機の小型化、着陸料やテナントの売り上げ減収を招き、11月に公表した2020年度上半期(4-9月)連結決算は大幅な赤字だった。さらに、下半期(10-3月)の旅客数が前年度同期比で国内線55%減、国際線100%減で推移した場合、年間の売上高が事業計画の983億円から347億円となる予測を公表した。
航空業界においては、新千歳にも就航していた格安航空会社(LCC)のエアアジア・ジャパン(愛知県常滑市)が、11月に破産手続きの開始を申し立てた。国内に拠点を置く航空会社の倒産は初めてのことだ。
航空各社は現在、減便にとどめているが需要がないと判断されれば最悪の場合、路線撤退もあり得る。本道の場合、地方では観光産業だけではなく医療スタッフや教師といった地域を支える人たちの利用があるため、HAPには公共インフラを確保する責任がある。
新千歳と旭川の上下一体運営に、21年3月からは予定通り函館や帯広など5空港が加わる。いよいよ完全民営化のスタート。しかし、政府は15日、28日から来年1月11日まで「Go To トラベル」の全国一時停止を決めた。年末年始の利用回復を見込むHAPに冷や水を浴びせた格好だ。低空飛行の中、地域経済を担う手腕が試される。正念場はこれからだ。
(北海道建設新聞2020年12月17日付1面より)