200m超の高層ビルを構想 容積率緩和、建て替えに需要
2020年は、札幌駅前でJRタワーの高さを上回る大規模再開発の具体的な施設像が相次いで表面化した1年だった。道都・札幌の顔となる北5西1・西2地区と、旧札幌西武跡地を活用する北4西3地区の両街区では、高さ200m超えの超高層ビルとする構想案が明らかになった(関連記事)。コロナ禍の影響は不動産市場にも暗い影を落としたが、30年度の北海道新幹線札幌延伸を見据えた再開発計画は、投資効果の期待感から滞ることなく着実に進んでいる。
ことし8月、北5西1・西2街区の再開発ビルについて環境アセスメントの初弾手続きとなる計画段階環境配慮書の縦覧が始まった。札幌市とJR北海道グループで構成する再開発準備組合が提示した事業計画案では、最大高さ約255mのA案と、約200m、約150mの2棟構成となるB案のいずれかで検討。道内最高層の約173mあるJRタワーを確実に上回ることになる。
両案とも施設規模は延べ約41万7000m²で想定していて、1階にはバスターミナルを置き、2階から上階に商業や国際水準のホテルを設置。オフィスに関しては、事業推進パートナーとなった三菱地所と東急のコンソーシアムが、ビル全体の価値向上策や施設計画、企業誘致方針などについて提案し概要を固める。
一方、ヨドバシカメラや北海道建設会館など北4西3街区の地権者で構成する再開発事業では、地下6地上40階、高さ約220mを誇る複合ビルを計画する。ホテルとオフィスが入る高層部と商業や駐車場からなる高さ約50mの低層部で構成。21年度に事業化の前提となる都市計画決定を目指していることから、北5西1・西2地区よりも先行して工事に着手することが見込まれている。
コロナ禍で訪日外国人客の需要がなくなり、これまで旺盛な投資を見せていたホテルは計画の中止、延期する事態となった。オフィスは3密を避けたリモートワーク導入など新しい生活様式の対応で、今後の賃貸需要が予測しづらい状況だ。秋元克広札幌市長は「宿泊関係は非常に落ち込み、投資回復までの時間軸に影響が出ないか心配している」とし、アフターコロナでホテル、オフィス需要の変化を注視して計画に反映させる必要性を指摘する。
札幌では、新幹線の延伸や冬季五輪招致、都心アクセス道路の事業化など経済を刺激する明るい話題が多い。駅前通北街区の容積率が緩和されたことで、北海道ビルなど更新期を迎えた施設の建て替え需要が出始めてきた。日本不動産研究所の石川勝利北海道支社長は「駅前だけでなく大通公園地区でも再開発の動きはいくつかある。新幹線札幌延伸を見据え、確実に広まりを見せている」と述べ、札幌への投資が決して弱まってはいないと強調する。
道都が大きな成長を遂げた1972年の冬季五輪から半世紀近くの時を経て、新たな街への胎動が聞こえ始めた。(おわり)
(北海道建設新聞2020年12月23日付1面より)