文化財指定や郷土学習活用
10月17日、新得町は旧狩勝線の鉄道遺構を巡るツアーを開いた。訪れたのは狩勝隧道(ずいどう)をはじめとする8施設。参加した町民らは山中に眠る土木施設の数々に驚きの声を上げた。
新内隧道、大築堤群、小笹川橋梁は2003年に土木学会の選奨土木遺産に認定され、これに狩勝隧道を含めた4施設が09年に経済産業省の近代化産業遺産群となった。現在、技術的、歴史的にその価値の高さが認められている。

小笹川橋梁。橋の上は遊歩道になっている
建設当時の姿を今もとどめる新内隧道は、トンネル内にヒカリゴケが自生していることでも知られる。大築堤群は、新内沢の大築堤と大カーブなどの築堤群で構成される。
ツアーでは国道38号狩勝峠5合目駐車場から大カーブを眺め、樹木の中にその跡を確認。案内役を務めたNPO法人旧狩勝線を楽しむ会副理事長の西村良雄さんは「盛り土量は80万㎥と推定される。国内でも有数の土木工事だったのではないか」と説明した。
小笹川橋梁は、道内に現存するれんが造りの鉄道アーチ橋としては最古とされ、アーチ径は4・6m、高さ7m。アーチ部は強度を保つために6層ある。旧狩勝線をよく知る元機関士の大崎和男さんは「川の下の岩盤層にも厚みのある岩が6層入っているといわれている」と付け加えた。
橋は今も堅牢だ。鉄道遺構群の中でも新得市街地に近く、現在、橋の上は廃線跡を活用した遊歩道「狩勝ポッポの道」の一部となっている。河床部の洗掘が進んだため、保全に向けて町による改修も行われた。
町教育委員会はことし1月、これら旧狩勝線の鉄道遺構群を町指定文化財に指定。町教委社会教育課では「当面は現状維持のまま、今あるものを後世に伝え、必要に応じて維持補修する。ツアーは機会があればまた開催したい」と話す。
鉄道遺構群の活用策では、小学校の郷土学習に取り上げられたほか、ことしは中止されたが線路跡をコースにした「狩勝トレイルランニング」も開かれている。
旧狩勝線を楽しむ会では鉄道遺構群のガイドも行う(ことしは中止)が、訪れた人は隧道や築堤群に関心を示すという。「碓氷峠と並ぶ魅力がある。再び脚光を浴びる日が来ると思っています」(西村さん)。まちの発展を支えた鉄道遺構群を多くの人に知ってもらいたい-との思いが活動の原動力だ。
本道の歴史の中で、旧狩勝線の鉄道遺構群と、新得の地が果たしてきた重要な役割が広く認識されることを願っている。
(北海道建設新聞2020年11月18日付1面より)