小樽や厚真で21年度内に方針
道内市町村で市役所や役場庁舎の建て替えに向けた検討が進んでいる。2020年度は根室市や稚内市、網走市などで設計に着手。小樽市や厚真町などは現在検討を進めており、21年度末までに方針を示す予定だ。一方で、耐震性が不足しているにもかかわらず、予算不足などから具体的な見通しが立たない庁舎も多い。近年、大規模地震が頻発していることから、早急な対応が求められる。(一覧表は2021年1月6日付3面に掲載)
総務省消防庁の調査(20年7月公表)によると、道内市町村の防災拠点となる庁舎の耐震化率は18年度末時点で69.9%と全国平均の85.6%を大きく下回るなど後れを取っている。
20年度に設計に着手したのは根室市や新得町、奥尻町、網走市、稚内市など。稚内市は23年度、その他は22年度の着工を見込む。
耐震化に向けた検討を進めている市町村を見ると、小樽市では市役所庁舎本館の改修と庁舎別館、保健所庁舎・水道局本庁舎の統合を構想。21年度にも詳細を決定する。厚真町は21年度内に庁舎周辺整備基本構想を策定し、佐呂間町と豊頃町は21年度開始の総合計画で方針を示す見通し。留萌市は庁舎建て替えに向け、20年10月に公共施設整備検討会議を立ち上げた。
災害拠点となる公共施設の耐震化や津波浸水想定区域にある公共施設の移転を対象とした国の緊急防災・減災事業債が20年度に期限を迎えることから、検討の加速につながった。同事業債は延長が検討されており、耐震化がさらに進むことが期待される。
一方、夕張市や美唄市、積丹町、音威子府村など具体的な検討に至っていない市町村も多い。上川町では、17年度に総事業費20億円の計画を立てたが、財源が確保できず保留となっている。
道総務部危機対策課の担当者は「学校施設の優先度が高く、限られた予算の中では役場庁舎の耐震化が後回しになる傾向がある。財政指標への影響を考えると庁舎の建て替えに踏み切れない市町村が多い」と話す。
また、新型コロナウイルス感染症の流行も耐震化に向けた検討を阻む要素となっている。芦別市では、建て替えに向け年度内の実施設計着手を目指していたが、コロナの影響で市民の意見を集める機会が設けられなかったことや、税収減少など財政に大きな影響が見込まれることから、先送りを決めた。コロナの収束はいまだ見通せず、同様の事例が生じることが懸念される。
道内市町村の役場庁舎の多くが1981年以前の旧耐震基準で建てられており、耐震性が不足している可能性が高い。16年の熊本地震では、本庁舎が破損して機能が停止する被害が発生。災害時の司令塔という重要な役割を担っている庁舎の耐震化が急がれる。
(北海道建設新聞2021年1月6日付1面より)
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北海道建設新聞2021年1月6日付3面には、道内市町村の主な庁舎建て替えの検討状況について、建設年、規模、詳細をまとめた表を掲載しています。
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