本間純子 いつもの暮らし便

 アリエルプラン・インテリア設計室の本間純子代表によるコラム。

 本間さんは札幌を拠点に活動するインテリアコーディネーターで、カラーユニバーサルデザインに造詣の深い人物。インテリアの域にとどまらず、建物の外装や街並みなど幅広く取り上げていただく予定です。(北海道建設新聞本紙3面で、毎月第2木曜日に掲載しています)

本間純子 いつもの暮らし便(4)ピクチャーウインドーの「冬の風景展」

2021年01月15日 09時00分

 一昨年、リビングの模様替えをしたところ、私の定位置が、少しだけ窓に近くなりました。これまでも、外の景色はよく見えていたのですが、1mほど移動したことで、庭木の枝や林の木々に新しい発見がありました。

 窓から見える樹木は10種類ほど。ナナカマドとオンコ(イチイ)は庭木ですが、その他は林のメンバーです。庭は広くはありませんけれど、道を挟んだ向こう側に広がる林は、しっかり「うちの庭」に見え、リビングの窓は普通の窓ですが、お徳感満載のピクチャーウインドーです。

 毎日眺めるということは、ゆるーい定点観測のようなもので、根開き、芽吹き、新緑―と、変化していく木々の様子は、楽しい気づきの連続です。ヤチダモはどの木よりも遅くに葉を広げ、秋になると真っ先に葉を落とします。効率重視の仕事人みたいで、思わず、自分の仕事の仕方と比較し、苦笑です。年周期の特徴も木の個性。ヤチダモの教えですね。

 芽吹きの4月から落ち葉の11月までの観察は本当にワクワクの毎日ですが、雪が降り始めると、楽しさは半減です。葉の成長やその色の変化が見られない12月から3月の冬期間は、なんとも物足りない。さらに雪が降ると、数少ない色彩も雪の下で冬眠してしまいます。「この4カ月が短縮できたらどんなにいいだろう」とずっと思っていました。

 ところが最近、雪の季節の色彩は、夏の頃とは少し違うように感じられ、注意して見るようになりました。例えば、雪をのせたナナカマドの実は、より鮮やかな赤に感じますし、雪の下からのぞくオンコの暗い緑の葉は、思いのほか緑を感じます。街の中の看板や郵便ポスト、外壁の色も夏よりもさえて見えます。雪の白が地色となり、他の色を際立たせる働きをしているようで、白い雪は、なかなかの業師です。

 さて、遠景の木々はほぼ灰色ですが、近くで見る木の幹は、灰色にほんの少し色みが加わっているのが分かります。ナナカマドの樹皮は赤みの灰色、ヤチダモは黄みの暗いベージュ、ポプラは灰色がかった暗いオレンジ。夏にあれほど白く際立っていたシラカバの樹皮は、保護色のように雪の風景に溶け込んでいます。

 葉が落ちて林全体に光が届き、さらに白い雪がレフ板のように働くからでしょうか、幹の色がとてもよく分かります。冬の木立は、以外とカラフルだったのです。

 そして、一年に数回、林は単色の美しい風景を、見せてくれます。新雪が降り積もった風のない早朝、それまで地色の役目をしていた白い雪が、主役に大変身。白いふわふわの雪を枝の先端にまでのせている姿は、凛(りん)として繊細。根元の雪の小山にも、ふんわりと雪を重ね、白から白へのグラデーションが林の中に広がる極上の風景です。

 朝日に照らされて、オレンジ色に染まる新雪の景色も、日が少し高くなって、薄い青色の影を雪の地面に描く景色も、この季節ならではの美しいシーンですが、白一色の新雪の風景には名画の風格があります。ただし、早起きをしなければ見られませんが―。

 枝先に積もった雪が、淡い紅色に見える頃、春の準備が始まります。それまでは、暖かい室内から冬季限定の風景展を堪能し、定点観測に磨きをかけることにしましょう。

(北海道建設新聞2021年1月14日付3面より)


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