企業誘致の呼び水に
新型コロナウイルス感染拡大の逆境をチャンスに―。室蘭市は、企業誘致の呼び水とするため、昨年8月に室蘭テクノセンター内へ開設したサテライトオフィスのさらなる利用促進を図る考えだ。コロナ禍以前から市外企業誘致に向けて企画したモニター事業だが、現在では世間的にテレワークが推奨され、サテライトオフィスへの注目度が上昇。市の担当者は「市内には室蘭工大があり、専門分野での共同研究や学生のリクルートなどにメリットがある」とアピールしている。
市ではここ数年間、超音波溶着機製造などの精電舎電子工業(本社・東京)、IT企業のビックボイス(同)といった研究開発、情報系企業の進出が顕著となっている。
こうした背景を踏まえ市は、20年度からサテライトオフィスのモニター事業を開始した。期間は20―21年度の2カ年。室蘭への進出意欲はあるが二の足を踏んでいる企業に対し、事業所開設前の段階でも地域で仕事をこなせる空間を提供することで、将来的な本格進出の足掛かりとさせたい狙いがある。
サテライトオフィスは室蘭テクノセンター(東町4丁目28)に設置。市がセンターの一室を借り、平日の午前9時から午後5時まで開設している。申し込みをすれば、最大1週間の利用が可能だ。
広さは約55m²で、8台のテーブル、オフィスチェアのほか、パーソナルロッカー、公衆無線LAN、電源などを用意。各席の間はパーティションで区切られ、コロナ対策も施している。別室でオンライン会議をすることも可能で、いずれも無料で使用できる。
市担当者によれば、オープン後2カ月が経過した昨年10月現在で、情報系の企業をメインに10社の利用実績があった。
コロナ禍で東京圏へのPR活動がままならず、現状では道外企業の誘致にはつながっていないが、札幌市在住の個人事業者が室蘭で開業するために利用したり、札幌市内の企業が室蘭に出張した際にコワーキングスペースとして活用するケースが目立ったという。
市は、コロナ禍が過ぎ去れば道外へのPRに注力する考えだが、現在の状況が長期化すれば、地方への企業拠点分散化の流れが続くのは必至とみている。そうなれば今後のサテライトオフィス利用者増も見込めるため、いずれの場合も市にとって重要な企業誘致の拠点となる。
日本製鉄、日本製鋼所など工業系製造業を中心に発展した室蘭は現在、新卒者の幅広い就職ニーズに応えるため、さまざまな業種の企業誘致に努め、人口減少の食い止めを図っている。コロナ禍を地域創生のチャンスにできるかどうか。サテライトオフィスがその試金石の一つとなりそうだ。
(北海道建設新聞2021年1月18日付15面より)