最大出力50万キロワット想定
えりも町特有の強風を、風力発電に活用しようという動きが活発化している。町内では、現時点で4社が事業展開を計画。13日にはAfterFIT(本社・東京)が環境影響評価方法書の縦覧を開始した。季節を問わず強い風が吹き付ける襟裳岬の背後で大型事業が進む。

日本有数の強風地で大規模なエネルギー事業が進む
同町は強風が多いことで有名だ。1980年からの統計では、年間で平均風速8m、風速10m以上の日数は約260日を数え、風力発電の適地として注目されている。
現時点で風力発電事業を計画しているのは、AfterFIT、JR東日本エネルギー開発(本社・東京)、日本風力開発(同)、アールイーパートナーズ(本社・大阪)の4社。最大発電出力はそれぞれ35万㌔㍗、50万㌔㍗、15万㌔㍗、20万1600㌔㍗を想定する。
アールイーパートナーズと日本風力開発は、計画の第2段階、環境影響評価方法書の手続きまで終了。JR東日本エネルギー開発は第1段階相当の配慮書手続きの完了にとどまっている。いずれも2020年内は手続きを進めていない。
どの計画でも、発電機となる風車は、襟裳岬の背後から北に向かって扇状に配置する。場所はオキシマップ山南側や本町地区などに集中しており、設置工事時は防音、振動対策など近隣住民への配慮が求められる。
また、町内で生息が確認されているシマフクロウや、飛来するタンチョウと風車との接触も懸念され、事業者はリスク低減に努めなくてはならない。
環境影響評価を進めるAfterFITは、20年7月まで環境配慮書を縦覧。同9月には知事意見として、動物への影響調査について専門家の助言を得ることや、他計画と事業範囲が重複する部分への対処などの検討が必要との指摘があった。
これを受け、今回の方法書では当初よりも規模を縮小。それでも1基当たり5500㌔㍗級の風車を64基と、依然として各計画の中でも大規模となっている。
方法書の中で、動植物をはじめとする環境への影響調査手法を明確にし、町と道の承認を得たい考え。順調にいけば、環境影響準備書、評価書の縦覧を実施した後、24年度秋の着工、29年度初旬ごろの営業開始となる。ほかの3事業者も23―26年ごろの営業運転開始に向けて準備を進めている。
(北海道建設新聞2021年1月26日付13面より)