バイオガスプラント核に 喜井知己鹿追町長インタビュー

2021年01月30日 10時00分

脱炭素社会の形成推進

 家畜ふん尿を利用したバイオガスプラントの稼働数が全国で最も多い十勝管内。プラントを核としたまちづくりに取り組む鹿追町は、2021年度から3基目の建設に向けて調査に入る予定だ。開町100年を迎えた昨年は役場庁舎など市街地の9つの公共施設を対象に地域マイクログリッドを構築した。脱炭素社会の形成を進める同町の喜井知己町長に戦略を聞いた。(帯広支社・星野 貴俊記者)

喜井知己町長

 ―3基目のバイオガスプラント建設を構想している。

 乳牛の飼養頭数が増加する中、北鹿追、笹川、東瓜幕のエリアを対象とする集中型プラントを構想しマスタープランを策定中だ。プラントは家畜ふん尿を適正処理するための財源を得る手法の一つと考える。維持管理上、売電は前提となるが、国が準備を進めるノンファーム型接続の申し込みが近々開始される予定にあると聞き、建設地などの調査に入る予定だ。総事業費28億円を投じた瓜幕のプラントを上回る最大の規模を想定する。完成すれば、計算上は町内世帯の8割の電源を賄うことが可能になる。町の集中型プラントとしては最後になるだろう。

 ―町にとってのバイオガスプラントとは。

 基幹産業である農業の生産性向上と、町が進める脱炭素社会の形成に向けて非常に重要な施設であり事業だ。1基目は臭気対策と農家の堆肥処理の手間を省く目的で07年に中鹿追で稼働した。農家は作業の省力化で牛の管理に専念できるようになり、町は余熱利用でマンゴー栽培やチョウザメ飼育を進め産業化への芽を着実に育てている。私は農業振興課長時代、瓜幕で16年から稼働した2基目の建設から関わっている。どちらも町が初期投資をし、その後は受益者の負担金と売電収入で運営できている。

 ―再生可能エネルギーの積極的な導入も進める。

 地域マイクログリッドの構築に向けて昨年、市街地の未利用地を活用し建設した太陽光発電施設を稼働した。自営線ネットワークを経由し役場庁舎や国保病院、鹿追小など9公共施設の電源を賄う。系統停電時でも最低限の給電を継続できる。一部は地中熱ヒートポンプによる熱供給も行い、これらを地域エネルギーマネジメントシステム(CEMS)で最適制御している。きっかけは北海道胆振東部地震のブラックアウト時に「バイオガスプラントがあるのになぜ電気を供給できないのか」と町民から指摘を受けたことだ。地元のエネルギーは地元で賄うのが最も理想的だ。役場を中心に公共施設が集中していることも好条件だ。将来的には中鹿追のプラントも組み込めるようにしたい。

 ―鹿島とスマートソサエティー構想策定で連携協定を締結した。

 町が協力する家畜ふん尿由来水素のサプライチェーン実証事業が縁で実現した。まちづくりや防災、インフラ整備に関してソフト面を中心に助言を受ける。同社と町職員のチームによる協議がこれから本格化する。

 ―そのサプライチェーン実証事業が最終年度を迎える。

 固定価格買取制度(FIT)期間終了後のバイオガスプラント運営に寄与するものと期待しているが、事業として成り立たなければならない。水素は有望なエネルギーで脱炭素社会形成に果たす役割は大きい。実証事業は国内でも例がなく、バイオガスの優位性を生かせるよう新年度にしっかり考えたい。

 ―ことしはどんな1年になるか。

 まず新型コロナウイルス対策で延期した開町100年の式典を開く。大きな節目に担当させていただき光栄だ。次の1世紀に向け人口減社会を見据えた持続可能なまちづくりが始まるが、鹿追に引き続き住みたいと思ってもらえるような施策を進める。

 喜井知己氏(きい・ともみ)1960年1月31日生まれ。鹿追町出身。2003年自治大学校卒。80年に鹿追町に入庁し企画財政課長、農業振興課長、総務課長などを経て19年1月に退職。同5月から現職。

(北海道建設新聞2021年1月25日付13面より)


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