深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 中和石油 杉沢謙次郎社長

2021年01月29日 15時00分

杉沢謙次郎社長

成長国の勢いを「輸入」

 道内ガソリン販売大手、中和石油(本社・札幌)が今月、レオパレス21のベトナム・ホーチミン子会社の買収を発表した。中和石油は3年前、首都ハノイに子会社を設けて現地での不動産や人材のビジネスに進出。道内建設業への技能実習生送り出しにも関わっている。経営多角化を進める杉沢謙次郎社長(45)に、今回の事業譲受の狙い、海外事業の展望を尋ねた。

 

 ―レオパレスと以前から関わりがあったのか。

 石油事業で一部取引があったが、特段の結び付きはない。純粋に事業の魅力から譲受に手を挙げた。レオパレスは2013年以来、日系企業向けに賃貸住宅の仲介などを続けてきた。他の入札者も多かったようだが、当社がベトナムで不動産事業を展開していることが強みになって落札できたと考えている。

 ―レオパレス側は譲渡契約発表資料で、赤字子会社だったと明かした。

 発表後、周囲から心配の声も頂いた。確かに赤字だが、調べると事業の収益性は年々改善し、コロナ禍前にはわずかながら単年度で黒字転換していた。足元はコロナ禍で再び落ち込んでいるものの、異常な状況が永遠に続くわけではない。
 ベトナムは日本の昭和30―40年代のような成長国で、不動産ビジネスは必ず伸びる。レオパレスは日系企業向けに特化していたが、顧客ターゲットを広げることで事業はもっと大きくなる。コロナ収束まで仮に5年かかるとしても、その後に十分挽回できる。

 ―技能実習生を多く受け入れるなど、中和石油はベトナムと縁が深い。

 10年ほど前、中国からの実習生を雇用したのが契機になった。時間がたつにつれ、自国経済が成長した中国人に代わってベトナム人が増えてきた。面談などで私も頻繁に渡航する中、国の成長性を感じて18年、100%出資で「中和ベトナム」を立ち上げた。この傘下に不動産、人材それぞれの事業会社があり、2社合計で20人弱が働いている。

 北海道の当社グループでは30人近い外国人技能実習生がいて、全員がベトナム人だ。エンジニアやインターン生を含めると約40人になる。

 ―現地では語学学校運営、日本への人材送り出しも手掛ける。

 実習生は自国で語学授業料、実習先仲介料などを負担して日本に来る。当社の実習生雇用の経験から、良心的な授業料・手数料で、語学をしっかり学ばせて送り出す機関が少ないと感じ、現地パートナーと事業を始めた。

 多くの業者は受け入れ先の日本企業が決まれば、本人の日本語習得度が足りなくてもそのまま送り出す。だが私たちは成績が基準以下なら企業にその旨を伝え、仲介をキャンセルする。教育レベルを確保しなければ働き手も企業も困る。

 ―コロナ禍は人材事業にどう影響している。

 人の往来ができないため実習生受け入れ中止も出ている。今は耐えるときだ。実習生を雇う立場から言えば、制度上、彼らの職種を柔軟に変えられないのが悩ましい。当社グループのホテル所属の実習生を別部門に動かしたくても、一度解雇して別会社で雇うといった対応が必要になる。

 ―道内の老舗企業が、分野も国も違う事業になぜ力を入れるのか。

 石油の事業は幸い順調だが、北海道も日本も今後人口が減り、長い目で見れば縮小市場になる。一事業にこだわらず、やれることを真剣にやらなければ生き残れない。

 ―ベトナムでの石油販売もあり得るか。

 エネルギー分野は政府の規制もあって現状ではハードルが高い。当面、不動産や人材事業を拡大しながら、いずれカー用品やメンテナンスなどの新事業も検討したい。

(聞き手・吉村 慎司)

 杉沢謙次郎(すぎさわ・けんじろう)1975年11月生まれ、札幌市出身。99年信州大繊維学部卒、日本IBM入社。2006年に中和エフ・エルに入り、09年中和石油常務取締役。15年9月に社長就任。

(北海道建設新聞2021年1月28日付2面より)


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