業務改善 可能性を提案
非対面型ビジネスモデルへの転換が求められ、業界を問わずデジタル・トランスフォーメーション(DX)の取り組みが加速している。IT総合コンサルのワイズプランニング(本社・札幌)は、VRや採用活動向けコンテンツの提案・制作を手掛ける。立川雄三社長に企業が取り組むDXの現状を聞いた。
―企業のDXは進んでいるのか。
政府や経営者のDXに対する投資意欲が高まり、ITは短期間で進歩した。しかし、多くの企業は関心があっても相談先が分からず二の足を踏んでいる。
相談を受けるときは、DXによって業務がどう改善されるのか明確にすることから始めている。現状にそぐわないDX導入は最新技術でもかえって作業効率を下げる。一律ではなく、効果を見極めた上でじっくり取り組みたい。
―VRを用いたサービスの現状は。
実写のVRで施設を見せるサービスが世界標準になりつつある。2020年の新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言で非対面の営業手段として注目され、撮影依頼は急増した。需要が高いのは100平方㍍前後の不動産向け内覧サービスだ。視覚的な分かりやすさで成約率が上がる。導入企業の多くがリピーターになっている。もうVRなしの接客には戻れないのではないか。
―非対面での施設紹介方法は。
不動産分野ではVRによる内覧コンテンツと、モデルルームの窓にプロジェクションマッピングで眺望を映す仕組みを提案している。高層マンションの場合、眺望が重要な判断材料になる。建設中でもドローンならば眺望を撮影できる。完成時に近い映像による物件アピールに役立つ。
スポーツジムやブライダル業界ではVRの導入が進んでいる。施設利用を検討している人は設備にこだわりがあり、事前確認に積極的だからだ。このほか、工場の案内コンテンツなど1万平方㍍以上の大規模なものにも商機を見いだしている。
―接客サービスはどう変わるか。
店頭のデジタルサイネージやVR空間内での接客が増える。例えば自社のマスコットキャラクターを動かして接客する。別室で店員がキャラクターになりきって営業するビジネスモデルが選択肢の一つになるだろう。
AIが会話内容や表情から顧客の好みを分析すれば、短時間でものを売りやすくなる。VRによる内覧や展示会に組み込むのも効果的だ。
―採用活動にDXは取り入れられるのか。
企業は対面の面接や会社訪問ができないことを想定し、採用サイトなど求職者向けコンテンツを手厚くする傾向が強い。ある大手自動車メーカーは一般的な予算の3倍以上をかけている。見応えのあるコンテンツを意識し、先輩社員のインタビューなどを多く盛り込んんだ。
新卒採用の場合、SNSを取り入れたアプローチを忘れてはならない。なぜなら若い求職者はツイッターやインスタグラムなどSNSで情報を収集しているからだ。ターゲットや媒体に合わせた話題づくりを心掛けたい。
―DXで道内企業のビジネスチャンスが増える可能性は。
コロナ禍で多くの企業がテレビ会議に応じるようになった。以前は出張の要望が根強く、移動時間やホテル手配など負担が大きかった。DXが進めば、道外企業との仕事がやりやすくなるだろう。悪天候や感染症拡大で移動できなくても利益が出せるビジネスを提案したい。
(聞き手・城 和泉)
立川雄三(たちかわ・ゆうぞう)1967年7月17日盛岡市生まれ。札幌電子専門学校(現・吉田学園情報ビジネス専門学校)卒。釧路練成会勤務、藤田印刷のDTPプロジェクトリーダーを経て92年に創業。
(北海道建設新聞2021年2月3日付2面より)