ヘルメット装着や命綱 2人以上の作業が必須
道北・空知管内では、建設業者が手掛ける屋根の雪下ろしで転落事故が相次いでいる。少雪だった昨年とは一転し、豪雪が見舞う中、雪下ろしの依頼が殺到。岩見沢では作業員が転落して死亡した。悲劇を繰り返さないため、各労基署では少なくとも2人一組で作業に当たるなど安全対策を徹底するよう注意喚起している。
岩見沢市によると、市内の累積降雪量は、4日午前8時時点で680㌢と前年の約1・8倍に上っている。
男手のない住宅や高齢者宅から雪下ろしの依頼が後を絶たないが、1月には一人親方の塗装業者(37)が屋根から転落死した。岩見沢消防本部によると、ヘルメットや命綱は身に着けていなかった。落下場所の雪の上には氷塊があり、頭から出血があった。
岩見沢市内の工務店社長は、「作業時のヘルメット装着や命綱、2人以上の作業は必須」と口元を引き締める。安全を優先し、命綱が掛けにくい3階以上の建物の雪下ろしは、基本的に断っているという。
同じく市内の塗装会社の経営者は「首都圏の緊急事態宣言で現場が休止となった。出稼ぎに行けなくなり、無理をして生活のために請け負う場合もあるのでは」と気遣う。
旭川労基署管内では、ことし1月末までに屋根の雪下ろしで業者の転落事故が4人発生した。前年冬季はゼロだった。旭川市土木事業所によると、3日時点での累積降雪量は350㌢と前シーズンを94㌢上回っている。降雪量の増加に伴い、事故が顕著に増加傾向にある。

雪下ろしの作業風景。安全対策の徹底が求められている
各労基署管内のまとめによると、今シーズンの雪下ろし中の休業災は、最多の旭川を除くと、名寄が3人、岩見沢が2人、留萌が1人。前シーズンは旭川、名寄、岩見沢、留萌ともにゼロだった。
旭川市内の解体業者は、1月下旬から1日に3件ほど雪下ろしを請け負っている。担当者は「昨シーズンは少雪だったこともあり、ことしは倍に感じる」と話し、多忙な中、安全帯の着用など対策を図る。三角屋根など安全帯の装着が難しい場合は、片側ずつ作業。右側で雪下ろしをする場合は、左側にロープを垂らし屋根下で作業員が支える。
さらにウレタン防水の専門工事業者は「ヘルメットを被っていない作業員が多いと感じる」と眉をひそめ、「一人作業は禁止している。最低でも2人一組での作業を徹底している」と気を引き締めている。
名寄労基署管内では、前シーズンに地上12㍍から落下する死亡事故があった。被災者は安全帯を着用していたが、親綱を設置していなかった。
士別市内の建設業者は、「できるだけ屋根に上らず、下から棒のような道具を使い雪庇(せっぴ)を落としている。屋根に上る場合は安全帯を着用し、ロープを設置する」と話し、作業員への指示を徹底している。
記録的な大雪が降った稚内市内では「1月に入ってからほぼ毎日雪下ろしに当たっている。朝から晩まで作業が続く」(建設業者)と疲労の色を隠せない。
強風や地吹雪で知られる留萌管内では「雪庇が何層も形成され屋根を巻く形になる。少しずつ落として安全を確保している」(建設業者)と細心の注意を払う。
雪の季節はまだ続く。作業以上に身を守る行動が重要だ。
(北海道建設新聞2021年2月8日付1面より)