新型コロナウイルス感染拡大が続いています。特に北海道では昨年10月以降に感染者数が急増して、第3波と呼ばれる感染拡大局面にあります。一方、この第3波が到来した晩秋から冬の時期は、一昨年まで毎年、インフルエンザウイルスの感染拡大が起こっていて、たくさんの人がインフルエンザにかかっていました。そうした状況から昨年10月以降、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時流行という、大変な事態になることが危惧されていました。
しかし、昨年10月からインフルエンザウイルスはほとんど流行しませんでした。北海道でも週に数例程度の報告があるだけです。例年の千分の一以下です。もう1月の下旬ですが、従来ならインフルエンザの流行で学校での学級閉鎖が相次いでいるはずなのに、今年は全くありません。結果的に最悪の事態は免れたようですが、全く不思議なことです。
インフルエンザウイルスは新型コロナウイルスとは全く異なった種類のウイルスです。しかし、人から人への感染経路は同じで、接触感染と飛沫(ひまつ)感染であると考えられます。接触感染防止には手洗いの励行、器具の消毒、飛沫感染防止にはマスクの着用、換気の励行、三密回避がそれぞれ有効です。
これらの感染防止策は、新型コロナウイルス感染を防ぐために、かなり徹底して行われていることは、言うまでもありません。新型コロナウイルス感染防止策がインフルエンザウイルスに対しても極めて有効だったという結論になりそうです。みんなの努力が、実を結んでいるのです。もちろん、油断は禁物ですが、この冬のインフルエンザ流行はないと予想しても無理はないと思います。
一方で新型コロナウイルスの感染は広がり続けています。インフルエンザウイルスを封じ込められるくらいの対策を取り続けているのに拡大は収まりません。いや、対策がなければ、もっと大規模な感染拡大になっていたところを、みんなの努力でここまで抑え込んでいるのかもしれません。それほど新型コロナウイルスは強力で厄介なウイルスなのだと実感します。
しかし、あきらめてはいけません。これまでの対策は正しかったと考えて、感染対策の継続が重要なのです。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)